科学の進歩・発展には、思わぬところで犠牲がつきもの
- ★★★ Excellent!!!
お、面白かったーー!
本作はSFの掌編集だ。多くの皆様が語るとおり、掌編ごとに丁寧に転結が描かれ、本当に読む手が止まらなくなってしまう。
物語の一つ一つも味わい深いのだけれど、それらを統合させている作品全体の雰囲気があるように思う。それは、ちょっとの工夫やちょっとの便利さを推し進めていった結果、思わぬところで「落とし穴」が待ち受けている、ということだ。
作品中では、発想豊かなSF的ガジェットが駆使されることで便利さが生まれたり、あるいは、問題解決が図られることがある。しかしその結果ゆえに、人が死に到ったり大変なことになったりする(詳しくは読んでみてのお楽しみだがなぁ~~ッッ!)。
翻って、私たちの生きているフィクションではない世界も、様々な科学技術の積み重ねに下支えされて、現今の「当たり前」が構築されている。電気やネット回線の前提があるからこそ、オンラインで知り合いに会ってゲームができたり。冷凍・冷蔵技術が発達したからこそ、刺身がどこでも食べられたり。といった具合。
でもそれは、それには。どこかに「落とし穴」が有るかもしれない。
丁寧に練られたフィクションで突き付けられる、科学の進歩の「落とし穴」。ふと、現実の「危うさ」についても思惟させられる。そういう意味で、本作はまっとうすぎるほどにSFの常套テーマをえぐり出してきている。
読み応え抜群。お勧めです。