恋愛ゲームの選択肢が現実で見えるんだが、ただし同姓に限るのは何故だ。

如月 真

好感度0人目

1



選択肢

①「いいよ、私が代わりにやっておくよ」

②「ごめん、そういうのは出来ない」

③「私より池野さんの方が皆に慕われているから、きっとアンケートに多く協力してもらえると思うんだけどな」



「…………さ、③……?」


「え?」


「あ、いや…。わ、私よりい、池野さんの方が皆に慕われているから、きっとアンケートに多く協力してもらえると思う…んだけど…な」


目線はクラスメートの池野さんの頭上を離さず、もごもごと口を動かした。


「えっ…!そ、そうかな…。橘さんにそんなこと言われると思ってなかったから嬉しいな…」


彼女は心底驚きながらも、束になったアンケート用紙で口元を隠しながら「えへへ」と笑った。

分厚いレンズのメガネが少し曇る。


”シャララ~ン”


ハープでも奏でたような音が脳内に響いた。

だが、目の前で立っている彼女は、何の変化もなく口元にやっていた手を下した。


「…正解か…」


「え?どうしたの?」


「いや、…なんでもないよ…」


きょとんと現状を把握できない彼女をよそに、私は眉間に手をあてた。


「??…あ、ありがとう。じゃ、アンケートを聞いてまわるのは私、やってみるね。あとで一緒に集計して提出しよう…ね」


さっきまで自信なさ気に私に託そうとしていた彼女の表情は、安堵し意気込んでいるように見えた。

自分の目の前を去っていく彼女の背中を目で追いながら、自分に対してため息をつく。



(……慣れないな…)


---------



高校3年生である私・橘桜花たちばなおうかは、たくさんの同世代と楽しい行事や毎日を過ごし、部活動を共に励み競い、甘かったり痛かったりする恋愛もある、この人生の1.2を争うほどの充実した期間…―

……の中で一人も友達ができなかった。

いや、言うなれば、作ろうとしなかった、いや、作ろうとは見えなかった、のかもしれない、…いや、確実にそうだ。


気づいた時から自分は”一匹狼”だと囁かれていた。

実際に面と向かって言われたことはないが、トイレで女子が話していたのと、家庭訪問の際に、親と担任が心配してヒソヒソ会話していたので、知っている。

だが、それは私に適した言葉だと思う。

どちらかと言えば大勢で行動したり、誰かに合わせるというのも苦手だ。

それに、嫌われたくない、良い子だと思われたいがために、気を使って嘘をついたりもできない。


だから「一緒にトイレいこうよ」と誘われたときも、

「いや、用もないのに行っても無駄でしかないから」と断り、

毎週掃除グループが変わる頃、同じグループの子に、

「今日遊ぶ予定があって、やっといてもらっていい?」とお願いされたときも、

「今週が掃除当番だって先月からわかったはずだけど。それは理由にはならないと思う」と、広い教室が静まり返るようなことが多々あった。


こんな態度をしていると、

「橘さんって感じ悪いよね。何様のつもりかよ」というような女子が増え、イジメやらなんやら起こっていたかもしれない。

だが、173センチという高身長なことで、まわりに威圧を与え、かつ、美人ともブサイクともない普通の顔だが横長の細目が、常に不機嫌そうなオーラを放っていたため、皆が自分を怖がり、逆に怒らせないようにと気を使われ、私の半径5メートル内には誰も寄らなくなっていた。


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…そしてそのまま2年が過ぎ、今に至る。

今や囁かれていただけの”一匹狼”も”一匹桜花いっぴきおうか(ミが抜けている)”と公に呼ばれるようになり、目を合わせただけで「すみません」と頭を下げられ、「極道の娘」だとか「バックに舎弟が何人も控えている」だとか、話の尾ひれどころか、話の頭から尾ひれまで嘘まみれに広まっていた。


友達100人作りたいという童謡のような意識はない。

だから独りぼっちが寂しい、ツライ、学校に行きたくない。

そんな感情はないとは言い切れないが、あまりに気にはしていない。

どちらかと言えば、独りはひとりで過ごし易い。




ただ、問題なのが…――――――





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