南極のドーム都市に暮らす子供たちの楽しみは……。
物理学界で高温超伝導フィーバーが起きる少し前の1982年、同人誌〈星群〉46号(1982年4月発行)に掲載されたショートショート。
きっかけは、E・M・サビツキー&B・C・クリャチコ『金属とはなにか』(講談社ブルーバックス・1975)という本で紹介されていた話。理論上、ある種の高分子材料を使えば、2000Kまで超伝導状態を保つ物質がありうるというんです。それを読んで、ふと思いついたイメージを衝動的に小説にしたもの。
もっとも、ハードSFを期待されると困ります。厳密に科学考証はやっていません。この頃はまだピン留め効果というものすら知りませんでしたし、本当にうまくいくかどうか計算もしませんでした。科学的にありえるかどうかに関係なく、頭に浮かんだイメージをどうしても描きたかっただけなので。
あと、当時はまだスペースデブリという概念も一般的じゃなかったので、読み直してみると「極軌道衛星に対してデブリになるんじゃないか」といったツッコミも浮かんでしまうんですが……まあ、そういういいかげんなところも含めて、おおらかな心で許容していただけるとありがたいです(笑)。
なお、ほぼ34年前に書いた原文通りなんですが、カクヨムに掲載するにあたって、元の文章に最小限の手は入れています。たとえば「蛍光灯」という時代遅れの単語は、変えざるを得ませんでした。「雑誌」とかも、もうこの時代にはないんじゃないかって気がしますが……。