「きこりのジゼポともりづくりフリッカ」2

「どうしたらいいんだ? そうだここは ものしりフクロウのちえをかりよう」


 ジゼポは森のおくふかく、ゼムゼレット・オウルのところに行きます。


「ホウ、どんぐりの芽にお日さまを当てたいなら、まわりの木のえだをはらうんだ。そうすれば木の芽にもに光がとどく。

 そしてネズミや虫から守るには あるていど大きくなるまで ぼうとあみで かこいを作るといい。

 ホウ ホウ、そう言えばこのまえ キツネザルがどんぐりの育て方をききに来たな、ホウ」


「なんだって? そうか フリッカのやつだ。自分だけぬけがけしやがって。そうだ、ちょっとこらしめてやろう」


 ジゼポは言われたとおり、どんぐりの芽のまわりの 木のえだをはらいました。

 木の芽に光が当たります。

 のこった木の芽のまわりにぼうを何本もたてて あみでかこいます。そしてひりょうをあげたあと 水をたっぷりとかけました。

 そこへフリッカがやってきました。


「ジゼポ、たきぎを分けてくれ」


「ほら、切ったばかりだから よくもえるぞ」


 ジゼポはフリッカに はらったばかりの木の枝をわたします。

 フリッカが かまどにえだを入れて火をつけると、かわいていない えだから もくもくとけむりが出ました。けむりだけでちっとももえません。


「ごほっごほっ、ぜんぜんもえないぞ。ジゼポのうそつきめ、こんど会ったらしかえししてやる」


 何日かたってからジゼポがフリッカのところに小麦粉をとりに行きました。


「ジゼポ、これがやくそくの小麦粉だ」


 ジゼポがその粉でパンをやいて食べました。すると


「ぺっぺっ、なんだ? じゃりじゃりする。フリッカのやつすなが入った小麦粉をよこしやがった。ようし、それなら」


 ジゼポは木を切り倒して ビーバーたちが作ったダムの水をせき止めて、フリッカのところに水が流れないようにしました。

 そのおかえしにと、フリッカはわざと もみがらが混ざっていたり、ひき残しが多くて しつがわるい小麦粉をわたしました。


 それからの二人は おたがいに しごとそっちのけで、相手にいじわるばかり くりかえします。

 ふだんからけんかばかりしている二人ですが、だれが見てもいつも以上にいがみあっていました。


「ジゼポさん、たのんでいた たきぎなんだが、もっていっていいかな」


 バーバリアンライオンのお菓子職人 テオブロマが来ました。でもこのところ 木を切っていないのでたきぎはほんの少ししか わたせません。


「こまったなあ、これじゃクッキーもケーキも焼けやしない」




「フリッカさん、たのんでいた小麦粉ですけど……」


 フリッカは ねこのおばあさん メイプルグランマにまちがってしつのわるい小麦粉をわたしてしまいました。


「あら、こまった。これじゃあ おいしいかえでスコーンが作れないわ」


 ビーバーたちや パン屋をしているミーアキャットたちからも 二人には ふまんの声が聞かれるようになりました。



 そんなある日、森の中でジゼポとフリッカが同じ道で ぐうぜん会いました。


「………………」「………………」


 二人ともだまってお互いをにらんだまま、とおりすぎようとします。


 がちゃっ


 ジゼポのおのの えがフリッカの かたに当たりました。


 どん


 ジゼポはフリッカをつきとばしました。


「なにするんだよ」


「今ぶつかっただろ、あやまれ」


「わざとやったんじゃない」


 どしん


 今度はフリッカが つきとばしました。


「こいつめ!」


 ジゼポはフリッカの首にとびかかって さけびました。


 くんだり ほぐれたり ひっかきあいをしたり、二人はけんかをはじめました。

 そこへ、ようすを見に来た リスのエアシリィがやって来ました。

 エアシリィは二人を止めることもできずに おろおろしています。


 やがて、二人はぜいぜいといきをしながら にらみあいになりました。両方ともあちこちきずだらけで 血がにじんでいます。


「――――グスッ。  グスッ グスッ。

 うぇぇぇえええーーーーん」


 エアシリィはかおに手を当てて しくしく泣きだしました。

 ジゼポとフリッカは おこりたくてもおこれないので、しょんぼりします。


 ばさっ   ばさっ   ばさっ


 そこへ、フクロウのゼムゼレット・オウルがやって来ました。


「ホホウ、リス……。いやいや 二人はなぜけんかをしているんだ?」


「おれはどんぐりの木を育てるんだ。フリッカよりも大きくてたくさん実がなる木だ」


「ぼくだってどんぐりを育てる。ジゼポのよりも かずが多くてりっぱな木だ」


「ホウ、そうか。では 二人ともやりたいことが同じなのに なぜけんかになる?」


 二人ともなにも言い返せません。


「お前たち二人が いがみあうだけならまだいい。だが、森のおくまできこえてくるぞ。

 おまえたちは けんかするのにかまけて まわりに めいわくをかけているようだな」


 二人ともうつむいてしまいました。


「おまえたちがけんかすることで、まわりのどうぶつは みんな おまえたちから はなれてしまうことになる。

 まあ、この先どうするかは 自分たちできめることだがな、ホウ」


 ばさっ  ばさっ


 ゼムゼレット・オウルは また森のおくにとんでいきました。


「わかった、おれのきこりごやのひりょうをやる。だから……」


「おい、ぼくのどんぐりの はちを半分やる。だから……」



 それを聞いた エアシリィはうれしくなりました。


「そう、二人でいっしょにがんばって」




 さらに月日がたちました。ジゼポが育てたどんぐりも フリッカがそだてたどんぐりもすくすくと育っています。


 前と同じように ジゼポは木を切って、フリッカは風車小屋で粉を引いてくれるので森のどうぶつは みんなおおだすかりです。


「ジゼポとフリッカはどうしてるかな? 二人ともきょうりょくしてたから なかよくなってるかも」


 エアシリィは二人のようすを見に行きました。

 ジゼポとフリッカは……二人いっしょにいました。


「ぜんぜんわかってねえな、カレーにはソースをかけるにきまってるだろ」


「そっちこそわかってないね、カレーにはあまずっぱいピクルス。これがいちばんいいんだ」


「わからずやめ!」


「そっちこそ!」


 二人はいっしょに どんぐりの木のせわをしながら、また 小さいことでけんかをしていました。




 ……あーーあ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「きこりのジゼポともりづくりフリッカ」 星村哲生 @globalvillage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ