「きこりのジゼポともりづくりフリッカ」

星村哲生

「きこりのジゼポともりづくりフリッカ」1

 ジゼポは白い身体に黒いぶちが入った犬のきこり。

 大きなおのをもって森の大木を切って たきぎにしてくらしています。


 かつーん かつーん かつーん


「木がたおれるぞーー、はなれろーー!」


  ばきばきばき   ごごごごご   どしーーーーん


 たおれた木をのこぎりで切って丸太にして さらにおのでわって かわかします。そうするとよくもえる いいたきぎができあがります。


 フリッカはしっぽが白黒のしましまもようのワオキツネザルで、森の番人。

 森のはずれの風車小屋に一人で住んでいます。仕事は 小麦やトウモロコシ、お米などのこくもつを風車で回る大きな石うすで ひいて さらさらの粉にすることです。


 ごうん  ごうん  ごうん

 ごり ごり ごり ごり


 石のかけらや ごみがまじっていると しつがいい粉にはなりません。石うすを回す前によく てんけんします。


 そんな二人ですが かおを合わせるたびにはりあって、小さなことでもけんかをします。

 今朝も、ほら。


「目玉やきっていうのは強火でじゅうっと焼いて、ふちがパリパリの方がおいしいんだ」

 これはジゼポ。


「ぜんぜん分かっちゃいないな、目玉やきはごくとろとろの弱火で焼いた なめらかなのがおいしいに決まってる」

 こっちはフリッカ。


「わかっちゃいねえな」「そっちのほうがわかってない」

「ふん」「ふん」


 そうやっていいあらそいばかりしている二人ですが しごとをする ばしょがちかいこともあって たきぎをあげたり 小麦粉をあげたりと、なんとかうまくやっていました。

 ある日のこと、森のリスたちのあいだで あるもんだいがおこっていました。


「ふうむ、今年はどんぐりのわかい木が育たない。せっかく芽が出ても ネズミや虫がかじってしまうようだ」


「どんぐりはおれたちの 大事な食料だ。このままだとこまっちまう」


「エアシリィ、おまえは森のれんちゅうと なかがいい。だれかにたのんで そだててもらってくれ」


「わかった、行ってきます」


 リスの女の子エアシリィは、お父さんからどんぐりがたくさん入った ふくろをうけとります。

 木から木へととびうつって いろんなどうぶつに 二人のいばしょをたずねます。

 町の中や、森の中のダム。

 見わたすかぎりのひらけたサバンナと、いろんな所に行きました。

 サトウカエデの林に行くと そこにジゼポとフリッカがいました。


「おまえもわかんないやつだな。いちばんおいしいのは はちのすワッフルにはちみつ。これいがい ないだろう?」


「きみこそわかんないやつだ。このよでいちばんおいしいのは かえでスコーンにメイプルシロップ。これいじょうのものはない!」


「ジゼポにフリッカ、こんにちは。またけんかしてるの?」


 エアシリィが二人にあいさつします。


「ジゼポ、ビーバーたちがダムに使う材木がほしいって。

 フリッカ、ミーアキャットのグラハムさんとメイズさんが 風車で粉をひいてほしいって」


「ああ」「わかった、行くよ」


「そうだ、二人におねがいがあるんだけど、森のどんぐりの木がへってるみたいなの。どうしたらふやせるのかな」


「どんぐり?」


「知らないのか? クヌギやナラ、シイとかカシ、ブナの木とかの木の実のことだ」


「それぐらいわかってる。どんぐりクッキーやどんぐりコーヒーの ざいりょうになる木の実だろ? ようはどうやってふやすかだ」


「まだ芽が出てない実はいくらかあるの。でもふつうに まいただけだと芽が出ても ネズミや虫が芽をかじって 実をつける木に育つのは半分もないの」


「わかった、じゃあおれがりっぱな木に育ててやるよ」


「ぼくをだれだと思っている? 森づくりのフリッカがぜんぶ大きな木に育ててみせる」


「それじゃ、半分ずつあげるから二人で育ててみて。楽しみにしてるから」

 エアシリィは麻のふくろいっぱいのどんぐりを 二人に半分ずつわたします。


「おれはきこりのジゼポ。切るのがとくいなら育てるのもとくいだ。フリッカなんかに負けないぞ」


 ジゼポは自分の家のすぐ近くの地面に、どんぐりをそのままうめました。


 フリッカはどんぐりを土にうめるまえに少しかんがえます。


「どんぐりを ネズミや虫に食べられないようにしよう。でもどうしたらいいんだ?。そうだ、ここは ものしりフクロウのちえをかりよう」


 フリッカは森のおくに行きました。どんどんすすんでいくと 日が当たらなくなって、森は夜みたいに暗くてすずしくなります。


「ああ、いたいた」


 一番しげった木の上にいるフクロウ ゼムゼレット・オウルにたずねます。


「ゼムゼレット・オウル、どんぐりの木を育てたいんだ。いいちえをかしてくれ」


「ホウ、どんぐりの木をふやすのか。それなら、芽が出てすぐはネズミや虫にに芽がかじられてしまう。大きくなるまで目をはなさずに育てるんだ」


「わかった、ありがとう」


 それを聞いたフリッカは風車小屋のすぐ近くで、どんぐりを一つずつ うえきばちで育てました。


 一か月ほどして、ジゼポの植えたどんぐりは芽を出しました。


「そうだ、ここはひりょうを やらないと」


 ジゼポは地面につもったたくさんのおちばを いっかしょに集めて たいひを作っていました。ふかふかの落ち葉を芽のまわりにたくさんまきます。

 ところが、そのうちのいくつかは、芽の先をネズミや虫にかじられてしまいました。

 おまけにジゼポが住んでいるきこり小屋のまわりは 木がおいしげっていて、どんぐりの芽にうまくお日さまが当たりません。


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