魅力的な設定が存分に生かされた痛快冒険譚！！

いくら頭を捻っても、出てくるのは探せばどこかにありそうな設定ばかり。
オリジナリティを追求していくと、あまりにニッチで、奇怪で、複雑な設定が出来上がってしまう・・・
そんな苦労を経験された方の多くが、この小説のタイトルを見た瞬間こう叫んだはず。
「「その手があったか！！！！」」と。
いざ提示されてみると「今までどうしてこれを思いつけなかったんだ！？」と思えるほどシンプルでかつ魅力的な発想はまさにコロンブスの卵。
こんな発想ができる人は一種の天才と呼べるのではないでしょうか。

設定の発想ばかりにこだわりすぎて出落ちで終わってしまう小説も多い中、この作品は素晴らしい設定が存分に生かされ、底抜けに痛快な素晴らしい冒険譚に仕上がっています！

味付けのためのわざとらしい悲劇なんていらない！沈んだ心を晴れやかにしてくれる清々しい物語が読みたい！そんな方に是非お勧めしたい作品です！

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【第一部読了後追記】

これほどまでに素晴らしいクライマックスを迎えるとは・・・私の予想の範疇を遥かに超えていました。

奇抜な属性を取り揃えて付加すれば「目立つキャラ」を作るのは簡単でしょう。しかしそれはただの記号でしかありません。
属性が生じるには必ず背景がある。そのバックボーンがあってこそキャラに命が宿るのではないかと常々思っていますが、その意味でこの作品はまさに「生きたキャラ」が登場する物語です。

戦いを重ねるにつれ少しずつ勇者の盤石ぶりに綻びが広がり、佳境を迎えて初めて、裏で進行していた事態の重大さを思い知る。
そして、物語の全てが明らかになったとき、冒頭から結末までほんの些細な描写さえ一貫したテーマを表現することに費やされていたことに気付かされる・・・その見事さに、私は感動に打ち震えました。

巧みに劇的な展開が演出された物語でありながら、その全般に漂う空気には、如何な場面であろうと読者を楽しませ、和ませようという配慮がふんだんに盛り込まれています。
悲壮な雰囲気に涙を零すと同時に思わず吹き出してしまうといった読書体験は、そうそう得られるものではありません。

思いっきり笑えて、痛快で、劇的で、そして優しいこの物語に出会えたことは、私の1つの財産です。