カクヨムで読んだ世紀末物語の中では最も共感できた。

描写力も素晴らしいのですが、ありふれた日常の一コマを並べて世界観を紡いで行くセンスが素晴らしいと思う。
ネタバレ回避の為に具体的には挙げられないが、確かにそんな人々の交歓があるだろうな、と思わせる場面の連続なのです。それでいて、文字数は3万字強。グダグダと書いていない事が数字で分かります。
さて、約半世紀後に終焉が訪れると言う設定に、私は初めて遭遇しました。
ところが、高度成長期に産まれた我々初老世代は、リアル世界で同じ感覚を既に味わっていたのです。幼少の当時、ノストラダムスの大予言が巷間に流布しており、「1999年8月に人類は滅亡するんだ」と半信半疑の精神状態で成長しました。「どうせ滅亡するのに、受験勉強なんて意味があるの?」と、心の何処かで呟いていましたから。東映か東宝が「ノストラダムスの大予言」と言う映画まで作ったんですから。だから、我ら世代には、世紀末=人類滅亡なんです。
少し世代が下ると、コンピューターが誤作動を起こすか?と言う2000年問題の方が記憶に残っているのでしょうが、私にはヤッパリ「天から恐怖の大魔王の火の玉が降ってくる」予言の方が強烈です。
だから、1999年夏を平穏に過ごした私は、軽い虚脱感に襲われました。
その後、マヤ文明の2012年終末予言を信じる事は全くありませんでした。

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