第6話優位性エクスタシー
レミントンをゆっくりとガンベルトから抜き、ハンマーをおろしてまず向けたのは騎士だった。
まるで、初めてのおもちゃを目の前に置かれたように目を丸くして俺とレミントンの銃口を交互に見つめている。
中々笑える光景だ。彼がこの鉄の塊が危険であることは分かっている。本能がそう知らせているんだ。一刻も早く逃げなければと足が震えている。
しかし、これが本当にこの40インチほどある机の向こう側の俺を瞬間的に殺せるのか?どうやって?投げるのか?呪いか?そんな純粋で狂気的な好奇心が彼を死に誘おうとしている。
もしも、本当に俺を殺せるなら是非見せてくれ。俺を殺してみろと言わんばかりの顔だ。
引き金に指をかけて銃口を頭に向けた。俺が引き金を引くのはただの好奇心なんて安っぽいものではない。
殺意なんて可愛げのある代物でもない。これは義務であり使命であるのだ。
ビットマン一族の代々伝わるただ一つの取り決めが、ルールが、使命が俺をこうさせるんだ。
この引き金を引けば爆発音が町中に鳴り響き、騎士達が隊列を組んでこの事務所に入ってくることだろう。
俺は出来る限りの抵抗はするが、殺せても残弾を考慮して5人。その後は裁判なしの即死刑かその場で殺されるかどちらかだ。
逃げられない。かと言って、少女をこれほどまでに侮辱した騎士を許せない。
少女を見殺しにしようとした騎士なんて要らない存在だ。
ただ、心残りなのは俺のこの先の始末と、「ここが本当に何処なのか」という点だけだ。
気づかないうちに下げていた頭を上げて再び騎士を睨む。
それと同時に今まで本を熟読していたエルフの妹が顔を上げこちらを見る。
あまりにも行動がシンクロしていたのでそちらに目がいき見つめ合う形となった。
青とも黄色とも取れる瞳が何かを言いたげにこちらを見ている。
いや、俺もだ。俺だって言いたいことは山ほどあるさ。助けてくれ。この知らぬ土地にいきなり来てしまい周りには銃を見たこともない奴らが俺をどうにかしようとしている。
君が俺を助けることが出来ると言うなら是非とも。
そんな馬鹿なことを思っていると妹が姉に何かを囁いた。
何だ?と思った瞬間に妹の口から出た言葉が部屋に響く。
「お主らはここでの出来事を全て忘れる。」
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