さて、極上のノワールをいただこうか。

殺伐とした、あるいは異常な世界観を造ろうとするとき、常軌を逸した言動やグロ表現を多用して演出するものと、文章力を主軸として成り立つものがあると思う。
この作品は後者でしょう。
無駄のない文章、淡々としているが決して浅くない心理描写にはとても惹き込まれたし、登場人物達が自らの過去を語る経緯も滑らかで、読んでいて負担がなかったです。作者の文章力の賜物ですね。

実在する洋画や洋楽、洋ドラマがあちこちに散りばめられて作品にリアリティーを与えているのですが、それらを用いた比喩表現があまりに的確で「ここでそれを持ってきたか、確かにそうだ!」とシリアスな場面なのに笑ってしまいました。(笑)
元ネタの分からないものは調べてみても面白いかもしれませんよ。

内容が重ためなので読む人を選ぶかもしれませんが、個人的には、超どストライクな小説でした。
ハマる人は心臓撃ち抜かれる勢いでハマるはずです。
ぜひ一読を。