現実世界と仮想世界を舞台にした青春SFドラマ。
小説家になるという夢を抱きながらも、家族に押し切られるまま医師になった主人公が、自分の仕事に一区切り付いたのが45歳。過ぎ去った青春を取り戻すため、現実さながらに再構築された90年代の仮想世界に飛び込み、そこでヒロインと出会って恋に落ちます。二人は互いに認め合い、愛情が深まっていきますが、やがてヒロインが心に抱える悩みが影を差し、それは世界の秘密へと繋がっていきます。
微笑ましくも切ない恋模様と、周囲の人間関係、重厚ながら丁寧に描かれるSF設定が世界観に上手くマッチしていて、最後まで読者を飽きさせません。
若い肉体での人生再スタートという、多くの人が夢見るシチュエーションで主人公が手にしたもの・失ったものが何だったのか、ぜひご自分の目で確かめてみてください。
最大級の賛辞をもってお勧めします。
第2回Webコンテスト応募作品です。
第1章で緻密な舞台が組み上げられます。どの部品(エピソード)が欠けても成り立たない精巧な舞台です。ありとあらゆる伏線が張り巡らされます。
第2章ではその舞台の幕が上がります。登場人物ふたりに感情移入して読み進めると、終盤に物語のギアが一段上がったことに気づきます。
第3章です。2章でふたりの世界に入り込んで忘れていた現実を突きつけられます。それから衝撃の出来事も。ギアはトップスピードです。呼吸すらままならずに4章へと進みます。
最終章です。ここは多くを語れません。とにかくここまで来てください。長編なので、サクサクと短時間では読めないでしょう。けれども絶対に後悔しません。
この作者の長編は終わりに近づくにつれ、終わってほしくないといつも思ってしまいます。最終話は惜しむように1行1行読みました。
これ以上スクロールしないとわかり、放心し、涙が頬をつたっていると気づいたのは読み終わってからしばらく時間が経ってからのことでした。
作者の調べ上げた情報、練り上げたプロット、作り上げた世界、この作品にかける想いに尊敬の念を込めた拍手を贈ります。
どうか、ひとりでも多くの人がこの『夢物語』を手にとってくださいますように。
そしてどうか、この『夢物語』を書いた作者の夢が叶いますように。
小さい頃に思い描いた夢。
今その場所に立っている人って、なかなかそうはいないんじゃないかと思う。
哀しいかな、私もその一人。
たゆまぬ努力を続けてもなし得ないこともあるだろうし、取り巻く環境がそれを許さないことだってあるだろう。
でもそんな人生を、自分の理想とする世界の中で、再度やり直すことができたら。
これは、諦めきれなかった夢を今一度叶えようと旅立つ主人公と、その先で偶然出会うことになる数奇な運命を持つ女性の物語。
理論上はどうしたって結ばれ得ない、そんな二人がどのような結末を迎えるのか。
普段ほとんど読むことのないジャンルだったけれども、凄く楽しめました。
長さを少しも感じさせない巧みな筆致と、魅力的なストーリー展開は圧巻ですよ!
医師として充分な実績を積み上げ、人の命を救うという崇高な使命に誇りと情熱を持った主人公。
しかし、医学界の権威であった父の敷いたレールに乗った人生を歩み続け、気がつけば幼い頃からの自分の夢を置いてきてしまった。
もしも過去に戻れるのなら、もう一度自分の夢を追いかけてみたいーー。
ある程度の人生を歩んだ大人なら誰もが戻りたい過去の時点があるはず。
主人公は医学の力を使って仮想の精神世界で夢に再挑戦しようと試みますが、その世界でとある女性に出会います。
現実の世界ではこれまで一度も接点のなかった女性と心を通わせていく主人公。
仮想と現実、主人公の二つの人生が重なるとき、彼らの重なる未来は現れるのかーー。
物語前半は現実世界で医師として働く主人公の半生が綴られています。
医学用語が多く登場し、緻密で固い印象を受けますが、彼が夢を追い求める辺りから加速度的に物語に惹き込まれていきました。
彼らの行く末が気になり、ハッピーエンドを期待しながら読み進めていくうちに、時間の経つのも忘れて読み耽りました。
これだけの長編で読み手を惹き込ませるのは、ひとえに作者様の技量と緻密なストーリー運びによるものだと思います。
他の方のレビューでも書かれているとおり、長さを感じさせない大作です。
読後にも素敵な余韻を味わわせていただきました。
私は長編の小説は途中で飽きてしまうので、読むのも、書くのも苦手なんです。短編の小説と違い一気に話が展開し、切れ味鋭い結末にもっていくといういつものRAYさんのパターンではありませんが、これはじわじわくる・・・っていうか何か次が気になって読んでいったら最後まで読んだという感想です。近未来のSF的な突拍子もない世界が広がってるのですが読んでるうちに自分が自然にその世界にいて主人公に感情移入して一緒に行動している気分になります。細かい部分で言えばまだまだよくなる余地を残した作品ですが(物書きでなくいち読者としての感想ですが)よく仕上がってると思いました。才能ある人との差を痛切に思い知らされました(笑)