加速度的に惹き込まれる大作です

医師として充分な実績を積み上げ、人の命を救うという崇高な使命に誇りと情熱を持った主人公。
しかし、医学界の権威であった父の敷いたレールに乗った人生を歩み続け、気がつけば幼い頃からの自分の夢を置いてきてしまった。
もしも過去に戻れるのなら、もう一度自分の夢を追いかけてみたいーー。

ある程度の人生を歩んだ大人なら誰もが戻りたい過去の時点があるはず。
主人公は医学の力を使って仮想の精神世界で夢に再挑戦しようと試みますが、その世界でとある女性に出会います。
現実の世界ではこれまで一度も接点のなかった女性と心を通わせていく主人公。
仮想と現実、主人公の二つの人生が重なるとき、彼らの重なる未来は現れるのかーー。

物語前半は現実世界で医師として働く主人公の半生が綴られています。
医学用語が多く登場し、緻密で固い印象を受けますが、彼が夢を追い求める辺りから加速度的に物語に惹き込まれていきました。
彼らの行く末が気になり、ハッピーエンドを期待しながら読み進めていくうちに、時間の経つのも忘れて読み耽りました。

これだけの長編で読み手を惹き込ませるのは、ひとえに作者様の技量と緻密なストーリー運びによるものだと思います。
他の方のレビューでも書かれているとおり、長さを感じさせない大作です。
読後にも素敵な余韻を味わわせていただきました。

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