暗殺する者として稼いで買った、パンの味。
守護する者として報酬でもらう、パンの味。
同じパンでも、ふたつの味がもたらしてくれる美味しさは、比べようもないほどに違うのでしょう。幸福感や充足感、己の心を満たしてくれる、最高の食事なのですから。
また中世を舞台とした動乱の時代で、女性が初の大手実業家として成功する、一種の時代の変革としても感じられました。
自分が生きるために殺しや強盗が蔓延する時代。言い換えれば、人殺しが当たり前のように黙認される時代で、生を求め足掻いている。けれども慈しみや温情を失わず、信義を貫く難しさや、葛藤もありました。
短いけれどこの物語は、『人間』というものを追求する、深みあるかくし味が、いたるところにあるように思います。
短編で読むのが惜しいとさえ感じます。師匠サイドのお話も追加で読んでみたいなと思わせてくれる、心に残る作品でした。
ありがとうございました!
二極化が進む中世の時代、貧困層として身を窶す青年に貴族の少女が小さな慈悲を賜れた。当て所なく盗人や殺人者に身を落としながら日々を過ごしていた青年にとある暗殺者が彼を見込んで技を教え込む。その師に恩義を感じつつも迎えた暗殺者としての岐路に彼は決断を迫られる。暗殺者の末路は大抵薄暗いものとなりますが、本作の主人公が向かえる結末は仄明るく、読後の鬱屈としたものを感じさせません。青年と少女が闇の中でお互いに見出した一筋の光明。それがやがて歴史を変えて行く。それぞれの立ち位置から鑑みられる感情の機微が上手に表現され、それぞれの苦悩と共に生きている人間を短い文章の中できっちりと匂わせてくれる良作だと感じました。
「パンが世界を変える。」←重厚な世界観を台無しにしてしまうフレーズはさすがにタイトルに持って来れませんでしたので、文末にそっと差し込ませて頂きました。
削除するかもしれない・・・・・・という一言に反発して
あえて☆二つにさせていただきました。
消すなんて勿体無い!!残してください!
出だしから終わりまで世界観の構築に破綻がなく
登場人物の背景作りが秀逸です。
陰惨な世界で必死に生き抜く主人公。
負の感情に抗いながらも、それを受け入れるしかないという状況の中
透けて見える主人公の優しさが読み手の心を掴んで離しません。
通り一遍の正しさではなく『正義』とは何かを考えさせるテーマ。
暗殺者という職業(?)に合った疾走感。
読者をミスリードする遊び心と、その絶妙さ。
『この短い小説の中に、どうしたらこれだけのことが盛り込めるのだろう』
と心の底から思います。
今の状態でも十二分に面白いと思うのですが、
ここは是非、修正や改稿をしていただいて完全版を読みたいです。
前向きにご検討を!!
富豪の少女と乞食だった暗殺者。
対極的な二人が世界を変革していくアクション小説の冒頭シーンみたいな小説でした。
この二人がどのように歩んでいくのかを読者として期待してしまいます。
カクヨムミーティング用の作品であるため短編である事だけが残念です。
加筆版2016/05/16
師匠がツンデレになってました萌え燃え
加筆前版
あえて辛口に言うのならば
師匠との関係性も深くかけていれば
師匠を殺す事への葛藤というもう一つのドラマが生まれてより味わい深くなっていたと思います。
命を助けてくれた少女か
それとも生きる術を教えてくれた親のような師匠か
闇の世界の住人として生きていくか
それとも光輝く世界にいる少女の可能性に賭けるか
現状のバージョンですと、
師匠は本当に殺す事だけ教えて主人公に親しみを持っていない感じになっています。
それよりも暗殺者としてプライドはあるが、人間としては善人であり、主人公の事を本当の息子のように思っているし、主人公も親のように思っている
の方が主人公が師匠を殺すときに燃えます。