そのおいしさは、至高の味だと思います。

暗殺する者として稼いで買った、パンの味。
守護する者として報酬でもらう、パンの味。

同じパンでも、ふたつの味がもたらしてくれる美味しさは、比べようもないほどに違うのでしょう。幸福感や充足感、己の心を満たしてくれる、最高の食事なのですから。
また中世を舞台とした動乱の時代で、女性が初の大手実業家として成功する、一種の時代の変革としても感じられました。
自分が生きるために殺しや強盗が蔓延する時代。言い換えれば、人殺しが当たり前のように黙認される時代で、生を求め足掻いている。けれども慈しみや温情を失わず、信義を貫く難しさや、葛藤もありました。
短いけれどこの物語は、『人間』というものを追求する、深みあるかくし味が、いたるところにあるように思います。
短編で読むのが惜しいとさえ感じます。師匠サイドのお話も追加で読んでみたいなと思わせてくれる、心に残る作品でした。
ありがとうございました!

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