確固たる実力に酔いしれる

奇抜な設定やぶっ飛んだ世界観がなくとも、確かな実力に裏打ちされたストーリーや描写は圧巻の一言でした。
かつての英雄も今では飲んだくれ、そんなジラルドの前に現れたユリーシャ。『妻』となった彼女や、村人達との交流に心温まり、と思いきや後半からの怒涛の展開に目が離せなくなり……。と、各キャラクター性だけでなく起承転結も高い水準で構築されており、この作品を構成する全ての要素が高いレベルでまとまっていました。
個人的には特にジラルドの決戦シーンが好きです。ファンタジー作品でありながら、そこだけ軍紀物というか壮絶な大河作品のように感じ、ジラルドの必死の形相が目に浮かぶようでした。
小説を書くことも、あるいは武道などを極めようとする時も、まずは『基本』を高めることこそが重要なんだと認識させて貰える作品でした。
綺麗にまとまって読了感も爽やかなので、未読の方には是非とも一度は読んで頂きたい作品でした。

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