謎の失踪を遂げた名探偵の父。
そんな父の背中を追って探偵学園に入学した主人公。
だが、偉大な目標に反して主人公自身は探偵としてポンコツで。
父の失踪について手がかりが見つかる中、ついに痺れを切らした教師に退学をかけた推理対決を強制せさられる。
なんとも燃える展開じゃないですか。
見事に読者を煽ってくる話運び、ストーリー構成には脱帽です。
しかし、怖いのはストーリーだけではない。
キャラクター、トリック、どこをとっても完璧な「新連載漫画の第一話」の構成。
そこに加わる一切のムダを感じさせない文章。
背筋が凍るほどの完成度。
正直、少年漫画雑誌に載っていてもまったく不自然ではない。
読めば必ず、「面白い新連載が始まった」と読者は思うことでしょう。
すごい。
ただあまりに「第一話」過ぎる。
ずばり言うと、親父さんの謎を解くのかと思えば、いきなりまったく関係のない推理話が始まってズコーってなりました。
あらすじに書いてあるんだけれども、書いてあるんだけれども!!
それでも私の頭の中はお父さんの失踪の謎でいっぱいだったんだよ!!
まぁ、そこまで思わせるのだから、「第一話」としては最高の出来ですよ。
いやはや、いいもの見させていただきました。
推理の才能もないのに、探偵養成学校へ通う内気な少年の、成長物語。
偉大なSランク探偵だった父親の面影を求めて、探偵を志した主人公には、悲しきかな、探偵の素質がありませんでした。
探偵を育成する学校での成績はいつも最低。
ついには退学寸前に追い込まれ、次に行われる推理対決に勝たないと後がない状態です。
…恐らくはこの『推理対決』が、話の肝であり山場なのでしょう。
それまでは切々と主人公の生い立ちや境遇が丁寧に語られ、彼を取り巻くヒロインたちや助手(使い魔)が賑やかに状況を語ってくれます。
ともすれば、目玉の推理対決に突入するまでが長く、漫画の原作ならもっと巻き展開でも良いかなーとも思いますが、順を追って理路整然とキャラクターや舞台背景を描写する作者様の精緻な筆致は、地に足ついた一定のクオリティを感じます。
父の行方はどこなのか。
主人公の名誉挽回はあるのか。
謎めく要素も胸躍る要素も満載です。
カクヨム読者の皆さん、こじゃれた推理で灰色の脳細胞を働かせてみませんか?