奴
僕は家を逃げるように飛び出てしばらく全速力で自転車を走らせた。
待ち合わせ場所に辿りつくと、僕以外のメンバーはすでに到着していた。
「よお!優斗!こっちこっち!よく間に合ったな心配したぞ!」
「フン、遅刻は懲罰との私の命令が効いたと見えるのう~優斗!!」
「うるせーよウニモグ!」
ウニモグも傍にいる、こいつは学校は遅刻魔なのにこういう時は早いなあ~全くうぜえなあ!
「いや母さんにマジ本当に捕まるところだったよ、で、今日はどこで特訓とかいうのやるんだよ?」
「実は俺の親父さあ不動産屋やってるんだけどよ、最近何かの研究所みたいな施設をどこかの業者から格安で買ったんだよ。マンション建てるからあと一ヶ月くらいで取り壊す予定だけど今のうちならサバゲーの練習にぴったりと思ってさ!」
「へえ~やるじゃん田沢!」
「まあな!じゃあ今日は俺に感謝してるってことで帰りマック驕りな!」
「えええ~そんなあ」
田沢の後について自転車を20分くらい走らせると、市の中心部から外れた場所に3階建て位のビルのような白い建物が見えてきた。壁の周りにはツタのような植物が沢山絡みつくように生えていて、もう何年も使われていない感じがした。
廃墟に到着した後、僕達は二つのグループに分かれてフラッグ戦(旗取り)の練習を開始した。
だけど残念な事に、何回かフラッグ戦をしたがやっぱり自分のチキンぶりはなかなか治らなかった。相手に遭遇すると、自分が打つ前に背中をむけて逃げてしまうのだ。
「あああ~どうして僕は怖がりなんだろう前に相手が来るとどうしても逃げちゃうんだよな」
そうため息交じりで独り言を言っていると、後ろから田沢が声を掛けてきた。
「わかった、平井!お前ひょっとしてアタッカー(攻撃手)よりも、スナイパー(狙撃手)の方が向いているかも知れないからお前今日は伏兵やれよ!ここら辺隠れる場所いろいろありそうだから、ディフェンダー(防衛手)を守る役やれよ」
フラッグが立ててある場所から数メートル離れた場所に大きな廃屋とは別にやや小さな二階立ての建物があった。
正面のドアの鍵が壊れているので入り易そうだな、よし!あそこの2階の窓から狙い撃ちすればいいや!二階からなら敵がいても上から狙えるからそんなに怖くないし!
僕は錆付いたドアをなんとかこじ開けて中へ入り込んだ。ドアが開けられると部屋の中は長年使われていなかったみたいで、ほこりとカビの臭いが充満していた。
敵を狙える位置を確認する為、窓際の方へ向かっている時部屋の左隅になにか置いてあるのに気付いた。
「何だあれ?」
7~8メートル離れた場所に何か人形の様な物?が置かれていた。
「なんだあれ?人体模型?」
ブンッ!シューーーーーーーーーン
Infrared detection device confirmed an objective
Language literacy confirmed
identifying unit type....unknown
default language changed to Japanese....
interrogation mode allowed
それは、セグウェイに乗ってる人みたいに一瞬で僕の目の前にきた。
ピー
「えっ?何.....」
「......身分証を提示せよ」
低い男の声がその緑の人形から発せられた。
「ひぃっ!」
何だこいつ......話すのか!
ヒューーーーーーーーーーーーーーーーギュッ!
こいつ腕がロープみたいに細くなってる!首に巻きついてきた。
「痛!ぐっ」
息が...!!!!
「他のユニット位置を教えろ!」
「何を......言って...」
ギリギリギリギリギリ!!!!!!!!!!!!!
「くっ苦し...うぐぐぐぐうううううううう」
もう駄目だ...キィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンン
耳鳴り!痛テェ!!!!!!!!
ドクッ! ドクッ! ドクッ! ドクッ! ドクッ!
心臓の鼓動......?なんか目の前が緑色だ......まるで緑色のセロファンを通して見てるみたい。
もうこうなったらめちゃくちゃにしてやる!!
「うをおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
なかばヤケで自分の腕を所構わず振りまわす、何度も!何度も!
やった!緑のやつの腕を解く事ができた。
「やった!逃げれる、えっ?えっ?」
僕は自分の意志とは関係なく目の前の緑の奴の背後に素早く回りこんでしまった。
「えっ?なんで?逃げるんだよ!!なんで背後に回るんだよ!」
そして僕の腕は後ろから奴の首を絞めていた。
「痛てえええええ、僕何でこんなに強く握り締めれるんだよ!!離さないと!離さないと!」
手の握力が何倍にも強くなったように緑のやつの首を締め付けている、でも緑の奴に生えているトゲみたいなのが刺さり激痛が走る!
その時......
「ハッ!」
緑の奴の腕が後ろ向きのまま僕の顔と首に巻きつき、強く締め付けてきた。
僕は意識が遠くなっていき、緑色の景色は真っ暗になっていた。
今度こそ駄目だ......
「おい!平井!そこにいるんだろう!何かあったのか!」
助かった!!!
ドアが大きく開かれ、強い光が差し込む、その瞬間急に光が入ってきたので僕は何も見えなくなった。
「ゲホッ!ゲホッ!ゲホ!」
「大丈夫か平井!どうしたんだ?何やってるんだよ?お前が何もしないからどうなっているかと思ったら、叫び声みたいなの聞こえてきたっけ」
「田沢!今変な化け物みたいなのがいて僕が......」
「はあ?どこに?」
「だから!!ここに!」
自分の傍に立っていたあいつはいなかった......
錯覚?馬鹿な!
「おい!平井お前その首!」
「えっ?何が?」
田沢に言われてスマホの動画モードで自分の首を見てみると、首にはロープのようなもので巻かれたアザが太くできていた。
「これは......なんだよ!」
床には緑色の粒が辺り一面に散らばっていた。
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