覚醒

その日は学校につくと、既に2限の授業が始まっており、なんとなく体が怠い感じがしてぼーっとしながら自分の席につき教科書を開くと

田沢が後ろの席からシャープでつついてきた


「おい!平井!この前のアレなんだったんだろうな?」



小声で聞いてくる

その次の瞬間あの日の思い出したくない光景が蘇ってくる。


全身緑色の大男。目の血管まで太く、緑色だった。

頭を数度横に振る。

あれは何かの錯覚か幻、蜃気楼のようなものだと自分に言い聞かせるつもりだったのに、田沢の奴本当にめんどくせえな!


「何がだよ?」


「何がって、あの緑の粒粒だよ!」


「知らねえな、この前の事は少し風邪気味だったから頭がぼーっとしてよく覚えててねーよ.....」


「じゃあ、これはどうだ?」



そういうと田沢は僕の手にプラスチックの小さな袋を手渡した。


こっこれはあの緑の粒!!こいつも持ってきたのか!!


「お前!それ!」


そう思わず僕が大きな声を出すと、体育兼国語教師の小島がこちらを睨みつける。


「おい、田沢!平井!どうやら俺の授業は退屈らしいな!良い根性だ!ご褒美として4限のハンドボール遠投の準備、白線引きはお前らにやってもらうからな!」


「くすくす....」

「ばーか」

「ハハハハ、まじめっちゃウケるんだけど」


くそう~こいつの性で~今日当番じゃないのに、体育倉庫まで面倒な白線引きやる羽目になった!


そして、ランチタイムが終わった後、体育の時間が始まった。

これはめっちゃ運動音痴の僕にとっては試練以外の何物でもなかったが、田沢と全力疾走を繰り返しなんとか僕たちは白線引きをやり終えたあと、隅っこで体育座りをしていた。


クラスカーストでも下位の僕と田沢は、いつもこういう、運動ができる奴が目立つ時間は何事もないように空気のような存在に徹するように、暗黙の了解で決めていた。


クラスの奴らが、まあそつなくごく普通に平均的なハンドボールの飛距離を出していく、そしてクラスの文武両道のイケメン野上が立ち上がると、女子の声色が少し変わってくるのがわかる。


「野上く~んがんばってぇ~」


フンッ気取りやがって!


「平井よ、口が膨れてるぞ、ヤダねえ男の嫉妬は」

「るせーよ」


野上は軽く、手を女子のほうに上げて、軽くステップを踏むとハンドボールを綺麗なフォームで投げた。


投げた瞬間、ボールは綺麗なアーチを描き僕たちが線を引いた一番遠い線を5メートルくらい超えて落ちていった。


「おおースゲーやっぱ野上ハンパねぇーわ!」


クラス委員長がボールが落ちたところまで行ってメジャーで測る。



「32メートルで~す!野上君すごーい」



「野上は、この前の中間テストも全教科学年1位だからな!文武両道!流石だなまさに大和男子の本懐だ!」




「次は平井!サークルの中へ入れ!お前は.....まあとにかく、手短に済ませろ!」


「はい.....」


あああ、ヤダヤダ!なんで50音順なんだよ!テストの返却でも、スポーツテストでもこいつの後はやりにくくてたまんねえよ!


クスクス

ゲラゲラ


ハハハハウケる~


「運痴の平井、たしかこの前の長距離走、学年で唯一途中棄権だったんだよな~」


ゲラゲラ



あああ~やだなだから体育の時間は嫌いだよ!大っ嫌いだ!


もうどうでもなりやがれ!クソオオオオオオオオ!!!!


そう思った次の瞬間


automatically grenade mode allowed


目の前の光景が全部緑のフィルターを通して見るような感じなって、何か機械的な声が英語みたいな感じで囁くように頭の中で囁いた。



immediately deploy the subject

in 5 seconds

4

3

2


えっなになに??


その瞬間、僕は自分の身体が自分自身じゃなくなったみたいに感じられ


右手が信じられないほど、力がみなぎり、両足にも信じられないほどの踏み込む力が加わり、あとは自分が自分でないような感覚で、ほぼ自動。


思いっきり振り下ろされた右手から ヴォンッ という恐ろしい音を立てボールははじけ飛ぶように運動場のグランドを超え、教職員の駐車場まで飛んでいき小島の車のフロントガラスを打ち抜いていた。



グシャ!!



一瞬静まる辺りの静寂。



その後数秒後に、周りのクラスメイト達が一斉に僕の周りに集まってきた。


「うお!すっげえ!なんだよおめ平井すげえなあ!」

「のーあるタカはなんとか隠すってやつかあ!!」


僕は自分でも何が起こったか訳が分からないまま、苦笑いをするしかなかった。

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