きっと読んだら考える。

 「死ねばいいのに」という言葉は、世間ではあまり歓迎されません。とはいえ、他人について評するとき、この言葉を我々はついつい使用してしまいます。そのような言葉である「死ねばいいのに」から始まる物語で、結末がどうなるのか楽しみにして読み始めました。

 真に迫っていたと感じた場面は、一日経って起き上がった後のところです。そうだよね、健康的な人間ならこうするよね、という描写が続きます。とても素朴な場面ですが、それゆえに現実感があります。

 最後の一言はコンクリートのように固く、打ち捨てられています。それまでの部分を温かく読んだ読者には冷水を浴びせ、「なんでぇなんでぇ、そんなんアリかよ」と読んでいた読者には溜飲を下げる隙間を与えてきます。どんな人が読んでも、読み終わった後にちょっと手を止めて考える時間を取らせる文章です。ご一読をおすすめします。

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