ファンタジーの現実性と風刺性

妹をドラゴンに殺された主人公ゴルドレンドは、必ずやそのドラゴンを根絶せんと決意した。

彼は長い年月の後、その計略と智謀を以て人々を纏め上げ、遂にドラゴンを討伐する。そこでチャンチャンと話が終われば単なる成功談なのだが、残念ながら現実はそこで止まることは無い。ネタバレになるためこれ以上は差し控えるが、ゴルドレンドは最後に自問する、果たして邪悪なのはどちらであったのか、と。

現実の世界に目を戻すと、人間は中世から近代において〈自然〉を駆逐した。科学や文明は急速に発展し、二度の世界大戦を引き起こすことにもなった。最早現在、人間の上に立つものは居ない。近代から現代へと進むにつれてその傾向は改善したように見えるが、しかし我々は常に、ゴルドレンドと同じように自分たちが「とんでもない怪物」になっていないかと自問する必要があるのではないか。そのようなメッセージを、このファンタジーは訴えているように私には思われるのだ。

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