竜より邪悪な僕たちは

作者 太刀川るい

77

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★★★ Excellent!!!

もうこれで、村ごと焼き尽くす暴君はどこにもいない。娘たちが生贄にされることも、子供が喰われることもない。
だというのに、竜を倒した初めての人間は人類をして最強最悪の種族としてしまったことに慄然した。

「竜にできずに人間に可能なこと、それは言葉を使うことだ」という彼のいうとおり、どこかで誰かが発明した技術や知識が世代も場所も超えて共有できるという人間をもってすれば、人間が生態系の頂点に立つことはある種の必然だったのかもしれません。しかし天敵の消失はひょっとして、同族の殺し合いの未来を開いてしまったのではないか?だとすれば、人間が言葉をもったときから既に破滅の未来が運命付けられていたのかも…
異世界でなく我々の現世界でもこんなことがあったのではと深く考えさせられ、今でも続く絶滅動物に思いを馳せざるを得ない物語です。国語の教科書に載せたい。

★★★ Excellent!!!

全7話の美しく残酷なファンタジーです。まず読んでみて、緻密に練られた設定や細かな描写に驚かされました。ファンタジーなのに、まるで現実に目の前で起きている話を読んでいるような感覚。思わず引き込まれ、7話一気に読んでしまいました。短いですが、最後にはウルッときて、考えさせる話です。

★★★ Excellent!!!

 とても完成度が高い。ストーリー、タイトル、人間と竜の違い、全てが高度に計算されていて、それが筆者の精緻な文章によって読む側の感情に強く働きかけてきました。
 竜殺しの強いカタルシス、その果てに訪れる世界、その中にある主人公たちの虚無感。全てが最低限の描写で最大限効果的に描かれています。
 とても素晴らしい作品でした。

★★★ Excellent!!!

妹をドラゴンに殺された主人公ゴルドレンドは、必ずやそのドラゴンを根絶せんと決意した。

彼は長い年月の後、その計略と智謀を以て人々を纏め上げ、遂にドラゴンを討伐する。そこでチャンチャンと話が終われば単なる成功談なのだが、残念ながら現実はそこで止まることは無い。ネタバレになるためこれ以上は差し控えるが、ゴルドレンドは最後に自問する、果たして邪悪なのはどちらであったのか、と。

現実の世界に目を戻すと、人間は中世から近代において〈自然〉を駆逐した。科学や文明は急速に発展し、二度の世界大戦を引き起こすことにもなった。最早現在、人間の上に立つものは居ない。近代から現代へと進むにつれてその傾向は改善したように見えるが、しかし我々は常に、ゴルドレンドと同じように自分たちが「とんでもない怪物」になっていないかと自問する必要があるのではないか。そのようなメッセージを、このファンタジーは訴えているように私には思われるのだ。

★★★ Excellent!!!

最後まで読み、改めてタイトルの意味を考える……そこまでも計算して作り込まれた中編ファンタジーです。
竜を追い詰めるカタルシスと、そして「その後」と、語るべきことを最低限の文字量で余すことなく描き切る筆力は本当に感服しました。
作者様の長編も、いつか読んでみたいと思います。

★★★ Excellent!!!

生き物を殺すと言う事。

この小説はその残虐なまでの過程が緻密に描かれている。描き切っている。書き貫いている。

少し触れただけでぷつりと切れてしまいそうな、繊細で可憐な殺戮がそこに一本の糸としてあり、そしてこれからも伸び続ける。

英雄譚がドラゴンを屠ったところで終わるのではなく、その瞬間から始まるってのが読ませるなあっと、とにかくきれいな文章でした。ぐっと来る。

★★★ Excellent!!!

復讐のために費やした人生とその代償。妹の仇を討った『英雄』ゴルドレンドの得たものは、あるいは失ったものは、いったい何だったのか。
非常に無駄のない文章で、世界観に引き込まれました。ドラゴンとの対決シーンは緊迫感があり、また並行して綴られる竜殺しのための技術や作戦のくだりはとても読み応えがあって面白かったです。
その後ゴルドレンドの辿った人生には、じわじわと胸が苦しくなる想いがしました。強さとは、正義とは何なのか。考えさせられるファンタジー作品でした。