誰もが抱える「孤独」にそっと触れてくるような「愛」についての作品集

愛することも、愛されることも、愛せないことも、愛されないことも、どれも切ないことで「孤独」なものなのだと感じられる短編集です。

「愛」という人との関わりがもたらすものは、もちろん幸せや喜びもあるでしょうが、この短編には「孤独」がより際立って感じられます。
ですが、決して冷たいものではなく、どの作品にも読む側の心にお湯を注いでくれるような、不思議な心地よさがあります。
それはきっと、「孤独」というのは決して一人きりではなり得ないものだからでしょう。
誰かがいてこそ、その人との関係に迷い、悩み、不満を持ち、そうしてそれが孤独へとなっていく。

生きていれば誰かと関わらなければならず、そのために誰でもきっと「孤独」を抱えているでしょう。
そういう心のやわらかい部分に、そっと触れてくれるような作品集です。

また、どの作品にも生活の匂いがあり、それが作品に確かな体温を与えていました。
だからこそ、「孤独」にもより一層深みが与えられています。

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