知らぬ人のいない日本一有名な決闘——

 巌流島の戦い——それを知らない日本人はほとんどいないことだろう。それだけ有名な決闘であり、吉川英治をはじめとする数多くの作家がそれを描いてきた。あるものは飛燕の遣い手に立って書き、あるものは二天一流の開祖にたって描く。
 しかし、本作はそのような——ある意味、手垢のついた題材を——2500文字という短い文章の中で臨場感溢れる作品に仕上げた。禅の境地へと向かう宮本武蔵、冷たく燃える野望を持った佐々木小次郎、両者を創り上げた名だたる剣豪たち——原稿用紙7枚にも満たない文字数で、それを迫力たっぷりに描いている。
 あまり書きすぎると読み上げたときの感動が薄れるかも知れないのでここまでとするが、「巌流島の戦いは名前だけ知っている」という人にこそおすすめしたい作品である。

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