第八話 「……これは流石に見えちゃいます、ハイ」
どうも皆さんこんにちわ。
異世界に来てなし崩しで女装こと男の娘をやらざるを得なくなってしまった新城悠11歳(14歳)です!
今日はですね、ボクが男の娘を演じるにあたって大事なアイテム、女の子パンツを選ぶ為にガーディアンナイツきってのファッションコーディネーターのローズ・アズライルさん(年齢聞いたら怒られました見た目は25歳くらい)をお呼びして、『恥ずかしくて聞けない……でも流行の下着が知りたいっ!』のコーナーを始めたいと思います。
「ん~……やっぱり最近の流行と言ったらこの辺りかしらねぇ?」
さぁここでローズさんはオススメの下着を5つ一気に並べてくれました。
右から薄い緑の縞々、白、水色、ピンク、レモンイエローと淡い色のまさにこれぞ女の子のパンツ! と言わんばかりのパンティが並べられていきます。
まずは薄い緑の縞々、こちらはボクの居た世界…特にネットの世界では絶大な人気を誇っていた一品ですねー。ネギがトレードマークの彼女にふさわしい下着!
生地にはただの薄緑の横縞が入った逆三角形型の綿のパンツ。
一見、質素に思えますがこの下着は着用した際にその真価を発揮します。
と言いますのも縞模様と言う物は凹凸を強調する特性があります。
これは女の子が持つ、柔らかで緩やかな美しい曲線全てを最大限に引き立ててくれるのです。
何を最大限にかと言えばそれは女の子のお尻。
このお尻の可愛らしい丸みや何もかもを縞々がその効果を持って魅せてくれるのです。
そこには縞以外の何物も必要が無い世界……縞と言う最高の女神は静かにボクたちのリビドーへ問いかけてきます。
それは完成された美と言っても過言ではないでしょう。
続きまして残りの4つ。
こちらは高級感溢れる匠の技に溢れた品々。目にする者たちはその匠の凝らされた作りに目を奪われるのは必至。
白、水色、ピンク、レモンイエローと淡くもカラフルな下着たちの縁取りにあしらわれているレースは、その淡いカラーリングを引き立てるかのように。
……しかし強調されすぎる事無くさりげなくデザインに溶け込み、使用されているシルクの持つ柔らかくも美しい色合いを最大限に魅せてきます。
そしてアクセントに使われている小さなリボンとフリル。
この2つが少女の持つ清純さをこれ以上ない程に演出。
これぞ少女が身に着けるにふさわしい、と大きなお友達も思わずにっこり。
「でもこの辺りはこう、子供っぽくてダメよねぇ?ほら、このネグリジェとかベビードールがワインレッドベースになってるから合わせると浮いちゃうのよ。
そうなってくると下に着ける物も黒か同色系の濃い赤を選びたいわよねぇ?」
おっとここでローズさんはセクシーランジェリーの代表の一つ、ネグリジェとベビードールに手を伸ばしました!
それは清楚と清純からかけ離れた背伸びしたと表現するには不安を覚える一品。
この2つ、先程紹介した物とはそのデザイン性も色合いも対照的。
「とりあえずユウ君ちょっと穿いてみて?」
おおっとここで試着タイムとなります。
手渡されたのはシースルーが気になってしまうこれはもう裸の方が恥ずかしくないんじゃ? と疑いたくなる過激なデザインのワインレッドカラーのネグリジェ! そしてそれに合わせてこちらも…ほぼ紐と僅かな布しか―――
「あの、ローズさん……これは流石に見えちゃいます、ハイ」
頑張って脳内実況をしながらこの状況を乗り切ろうと頑張ってたボクは、渡された下着類の前に真顔でその中継を終えてしまった。
「んー? 大丈夫大丈夫ぅ。それも含めて調整するつもりだし、穿いてみないとわかんないでしょ?
ホラホラ、早く着替えて!」
これ以上ない満面の笑みでボクを見つめながらトンデモナイ事をこの人は言ってくる。現状ボクには逃げ場はない……。
何故かと言うと今いるテント内にはボクと彼女だけ。
そしてボクが出られないようにローズさんはテントカーテン前を背に座っており、テント内も姿を隠して着替えを行えるような場所も無い。
つまりボクは目の前で服を脱いで下着を着けるしか道が無いのだ。
ボクは仕方なくなるべく見られないように…出来るだけ座り込んだり後ろを向きながら隠しながら着替えをする。
「ローズさん、楽しんでないですか?」
「そーんな事ないわよ。これ大事な事でしょ? ンフフー」
「楽しんでるじゃないですか……っ」
「気のせいよユウ君。ほら、いっぱいあるんだからドンドン行くわよ!」
その間、彼女はずっとニマニマしながら目を爛々とさせ、恥ずかしがるボクを見て楽しんでいた。
この表情には覚えがある…。それはまだ小学生だったボクに無理矢理色々なコスプレをさせてはハァハァ言いながら、写真を撮りまくっていた雪ねぇと同じ顔だった。
『ああ悠ぅうう良いよぉおお!
もう少し顔こっちに向けて…そう、その顔頂きィイ! ウーヒュヒュヒュヒュヒュ!』
今でも鮮明に思い出せるあの危険な眼光と変な笑い声。
……姉さんは中高と10代青春と言う希少ステータスを代償に腐女子の道を爆走していた。
今になってボクはどれだけきわどいアブナイ格好とポーズをさせられていたのかを理解出来る。
それだけにあまり思い返したくない当時の黒歴史(カオスメモリー)。
そんなこんなでボクは2時間近くローズさんにああじゃないこうじゃないと下着を使って色々と弄ばれました。
もうお婿に行けない。
何でこんな事をしてるのかと言うとあの後ボクは女装する事でレオナをほぼ24時間体制で護衛する形になった。
それは寝るのも一緒、食事も一緒と言った感じで常に彼女と共にいる状態に。
その為に完璧な女装を目指す事となって、下着に至るまでこだわらないといけないとローズさんの主張により今に至る感じ。
ちなみにお風呂に関してはお腹に傷が残っているのでそれを理由に逃げてます。
「ユウ、また今日も良いか?」
ローズさんによる試着地獄から解放されてフラフラとテントから這い出てきたボクの元へルシードさんが声をかけてきた。
「は、はい。丁度終わったんで大丈夫です」
慌てて背筋を伸ばしてそう答えるとボクは風に煽られるスカートを押さえながら先行く彼の後を追う。
あの魔族襲撃から2日が経った。
ボクはルシードさんと一緒に駐屯地近くをパトロールするついでに現状使える魔法魔術の確認を日課としていた。
一応ネトゲと言う物を説明したんだけど、ネットゲームと言う代物は理解してもらえなかった。
結局ボクはそう言う特殊な力を持ってる人間、って事で変に勘違いされる事で落ち着く形に。
……ボク、ただの中学生だったんだけどなぁ。
「じゃあ今日はお前の持っている上級魔法と魔術を……そうだな、あの丘辺りを狙って出してみてくれ」
「は、はい! じゃぁ火属性から行きます。|灰燼へ誘いし焔(レーヴァテイン)!」
今日も行われるスキルの試し打ち。
ボクはルシードさんが指差す岩肌が剥きだした丘を目掛け、自分のやっていたネトゲのソードソウルの火属性魔術スキルを使う。
スキル名を叫んだと同時に空中に赤い紋章が浮かび上がり、オレンジ色に発光すると白と赤の火柱が立ち上る。
閃光のあとに遅れて爆風と砂埃がここまで押し寄せ、無防備に突っ立っていたボクは砂にまみれて頭から足先まで真っ白に。
お陰でレオナのお古の赤いドレスは白いドレスに化けていた。
ボクの撃ったスキルは問題なく成功して視界の先にあった丘は見事に砕け散り、ミサイルでも落ちたかみたいにそこから黒煙が風に流され、焦げた匂いがここまで漂う。
「……ユウ、ちなみに今のは」
「うぇっと、火属性上級魔術スキルです。一応範囲ですけど凄く範囲の狭い火力特化のスキルですね」
口の中の砂を一生懸命ペッペしながらボクは答えると隣でそのまま呆然としているルシードさん。
どうもボクの使っている魔法魔術もといスキルは、この世界での魔法魔術に関する根底を無視している物が多いとの事。
そのせいで何をやってもこんな反応をされてしまう。
普通なら長い詠唱を唱えたり、魔法陣を使わないと使えない威力の物をボクはスキル名を言うだけで発動しているみたいで、この世界においてチート状態らしい。
ちなみに自分がハマっていたネトゲ以外のモノ……例えば好きだったバトルアニメとか漫画の技とかを使おうとしてみたけどどれも使えなかった。
理由は不明だけれど現状はネトゲのスキルしか使えないっぽい。
とは言ってもルシードさんの反応見る限りじゃそれで充分すぎる感じだけどね。
「それじゃ次は光系行ってみま―――」
威力にびっくりしているルシードさんを見て調子に乗ったボクは気分を良くして次のスキルを使おうと構えて、言葉に詰まる。
先程、スキルを使った場所の方から黒い人影がこちらへ向かってくる。
最初は人かと思ったけれどすぐに違うと直感が知らせと言う名の警鐘を叩く。
同時につい2日前に自分の身に起こった恐怖が背中を這い、もう癒えてるはずのお腹に痛みが走る。
「……やはり来たか」
ルシードさんはわかっていたのか青ざめるボクを余所に、その影を見て不敵に笑う。
「さぁユウよ、次はあれを狙って行ってみようか」
にっこりと笑い彼は指を向ける。
その先には2日前にボクのお腹を貫いたヤツと同じ姿の影が数体、こちらを目指し向かってきていた。
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