バーチャル・チョイス~未来を変える生徒会~

高見 雷

第1話 生徒会緊急出動! ー未知との遭遇ー

 私立 天月あまつき学園。生徒数3千人の総合教育学校。

 この学園は四方が山で囲まれており、緑豊かで閑静かんせいなことから教育的観点では環境が良いと評判である。

 人気の理由は自由な校則にもある。制服着用の義務無し。

 クラブ活動の強制無し。

 部活自由に設立OK。恋愛自由とかなりアバウトな方針。

 学園長が言うには、自由の中でこそ感性がやしなわれ天才が生まれるとの事だ。


 天月学園【生徒会室】

 恋愛ゲームをしている男子と隣でそれを見ている男子。

「ここの選択だけど神人かみとならどれ選ぶよ?」

「ハッピーエンド路線ならデートに誘うとこだろ」

「マジか!純情キャラだし、もう少し好感度あげてからじゃね?」

「バケツよ~バッド・エンド怖くて恋愛ゲームは出来ないと思うぞ」


 ゲームを横で見ていて選択をビビる友達に助言する男子(主人公)

風咲かぜさき 神人かみと・17歳』高2。生徒会役員

【元・ゲーム研究部】


「バケツて言うな!馬尻うましりだ!もう言われるのは慣れたけどさ」

 変なアダ名で呼ばれ生徒会室で恋愛ゲームをしている男子

馬尻うましり 伊草いぐさ・17歳』高2。生徒会役員

【元・ゲーム研究部】


「ミカンちゃんならどの選択肢選ぶ?」

 バケツは椅子に腰掛け漫画を見ている女生徒に助言を求めた。

 ミカンと呼ばれた女子は席を立ちバケツのそばでゲーム画面をのぞき込む。

「う~ん、よくわかんないよ~。【キスをする】なのかな~?」

 そう答えながら首をかしげる女生徒。

『夏川 蜜柑みかん・16歳』

 高1。生徒会会計。性格は、おっとり系。

 襟から胸元にかけ結んだ髪を垂らしている。 

【元・漫画研究会】



「ミカンちゃんマジ?デートもしてないんだよ。モロにバッドしゅうプンプンじゃん」

 バケツは予想外のミカンの言葉に納得がいかないようだ。

「バケツ面白そうじゃん。【キスをする】やってみろ!」

 神人は決断を悩むバケツを後押しする。

「え~!まあ直前セーブはしてるからやってみるか・・・」

 神人の言葉にバケツは渋々しぶしぶと【キスをする】へカーソルを当ててボタンを押した。ゲーム画面のキャラクターから音声が流れる。


『ずっと前から、あなたの事が好きだったの。嬉しい♡』


 その言葉にポカーンと口が開いているバケツと神人。

「この子、頭わいてんじゃねえのか!こんなんありえん!」

 ゲームの女性キャラを指差し発狂状態のバケツ。

「女心はわからん・・・。バケツ気を落とすなよ。そんなキャラもいるさ」

 神人はバケツの肩に手を置きなぐさめた。

 バケツの行動を見ていたミカンが注意する。

「バケツ先輩、女の子に”わいてる”って失礼ですよ。優しくしないとゲームの女の子からも嫌われます」

 そう言うと再び席へ戻り漫画の続きを読み始めた。


「それにしても、うちの生徒会はやることがないな~。ヘッドハンティングていうか結局のところ会長に泣きつかれたから、やむ無く生徒会役員してるけど。暇だよな~」

 神人は生徒会室の窓から校庭をながめ、退屈な日常をぼやいている。


「会長も一人じゃさびしかったんじゃね?俺は好きにゲームも出来るから生徒会、気に入ってるよ」

 バケツはゲームの続きをやりながら神人のぼやきに付き合っている。


「そういえば今日は会長来てないな。また遅刻か?おっ!噂をすれば走ってくる音が聞こえるな。おどかしてやるか!」

 神とはそう言うと扉の脇へ待機する。走ってくる足音は生徒会室の前で止まった。ガラッと扉が開く。と同時に神人の叫び。

「ワッ!」

「ぎゃーー!」

 バタンと倒れたのは女性教頭の【たちばな ツボネ】


「あら?これやっちまったかアハアハ・・・。どうするかな~おいバケツ!手を貸してくれ!ツボネが泡吹あわふいて倒れちまった」

 神人はツボネ教頭のわきを持ち抱えバケツの助けを待つ。

「しょうがねえな。ツボネ怒らせたら後でエライ目に会うぞ!さっさと捨てに行こうぜ」

 バケツもツボネの脇を抱え神人と歩き出す。


 しばらく歩くと理科準備室が見えてきた。

「ココらへんでいいんじゃね?」「そうだな人体模型に抱きつかせておくか」

 そう言うと二人は理科準備室の扉をあける。

 室内を見渡し人体模型を見つけるとツボネと抱きつかせた。

「おしOKだな!男日照おとこひでりだし喜ぶだろう」

 神人は笑いそうになるのを耐えた。

「人体模型て男だっけ?まあいっかww」

 神人とバケツはニヤケながら理科準備室のから出て行く。


 生徒会室に戻って来た神人とバケツ。

 扉を開けると元気な声で二人を呼ぶ少女がいた。

「神人~バケツ~はろはろ~。また何か悪さしてきたんでしょう」

 回転椅子をクルクル回しながら挨拶をする少女。

ひいらぎ 一子いちこ・17歳』

 高2。通称:ワンコ。生徒会風紀。見た目:ギャル系

【元・ファッション研究会】

 

「ワンコ来てたのか。まあ悪さてより、なんだ~後始末だよ」

 神人はギャルっ子の太ももを見ながら応える。

「事後処理てやつだな。けどワンコお前のその姿見てるととても風紀にはみえないよな」

 クルクル回るワンコの姿はギャル感丸出し。真面目そうにはとても見えない。

「しょうがないじゃない。私も元から風紀じゃないし。どうしてもって会長にすがられて泣く泣くなんだし。それにウチの学園、服装自由だから風紀て形だけだし」

 ワンコは今更いまさらなによ!みたいに言う。


「確かにそうだな。みんな可哀想かわいそうな会長に同情して集まった役員だしな~。お前って元ファッション研究会だっけ?」

「そうよ。会長が研究会に殴りこみに来てさらわれたのよ!」

 ワンコは生徒会にきた境遇に納得がいかない様子。

 ポケットからチュッパ・チャプスを取り出し口へ入れてなめだした。

「それも会長、事前に研究会の部長に賄賂わいろまでやって公認拉致だったし。神人達もでしょ?」

「ああ、俺やバケツも似たようなものだな。ゲーム研究部から拉致られた。ミカンちゃんは漫研まんけんだったね」

「はい!でも生徒会は色んな人が集まって退屈しないですよ」

 ミカンは境遇を気にしていない様子。そんなミカンに同感の神人。

「それは言えてるかも。機能してない生徒会でも、個性あふれるメンツだし、会長がたまに面白いネタ持ってくるしな~」

 バケツ、みかん、ワンコもウンウンとうなずく。そんな会話をしているとガラガラと生徒会室の扉が開いた。3人の女子がゾロゾロと入ってくる。


「おまたせ~。みんな真面目に来てるね~結構結構」

 遅れてきて会長席へ座る小さな女子

猫山ねこやま 千夏ちなつ・17歳』

 高2。通称:ニャンコ。生徒会長。

 見た目は小柄で可愛い。小学生くらいに見える。赤いボンボンでサイドの髪を結んでいる。


「ニャンコ遅いぞ!会長なら早くこいよ。今日、面白いネタがないならめるぞ~」

 俺は冗談半分でニャンコを脅した。

「神ちゃんそれだけはやめてよ~。神ちゃんいないと私生きていけないにゃん♡」

 会長は目をウルウルしながら神人にすがりつく。こう来ると可愛い会長を怒る気にはなれない神人。いつもながらとあきらめ、溜息ためいきを付く。


「神人が喜びそうな話ならあるわよ。猫会長にココに来る途中、相談してて遅くなったのよ」

 そう言って会長のフォローをしてくる少女

葉月はずき あおい・17歳』

 高2。生徒会書記。見た目:ポニーテールの活発な女子。

【元・超常現象研究部】


「先輩が好きそうな話題だと私も思います。謎の発光体の話です」

 葵の会話の後に話してくる、どこか生真面目きまじめそうな少女。

鳥居とりい 巫女みこ・15歳』

高1。生徒会役員。見た目:長い黒髪。白いリボンで後ろに髪を束ねている。

【元・ボランティア部】


 以上7名が生徒会役員だ。制服の着用義務は無いけど役員は着ている。

 男子制服は上がクリーム色のブレザー。下は紺色のズボンだ。

 女子の制服は白い修道服みたいな感じで裾丈は短い。

 胸元やスカート部分にレースで装飾がされている。襟元には大きな青いリボン。

 可愛いと女子に人気なので着用者が多い。


「そうなのよ!学園から見えてる神咲山にね、3日前かな謎の発光体が見えたのよ!あれは未確認飛行物体だと思うわ!」

 葵は見た光景を興奮気味にみんなに聞かせる。それに神人が口をはさむ。

「葵はそう言うの好きだよな~。前が超研だし信じたいのはわかるけど。UFOはないだろう。花火とか飛行機とかの見間違いじゃないのか?」

 神人の言葉にそうではないような~と話しかけてくる会長。

「葵ちゃんの話だと飛行機にしては止まっていたらしいの。それに何もない真っ暗な山から急に発光したって言うのよね」

 会長もに落ちない様子でウ~ンなどうなりながら考えている。

 

「それじゃ明日は休みだし生徒会全員で神咲山かみさきやまの探索でもしますか?」

 神人は少し好奇心こうきしんが出てきたので提案する。

「神ちゃんも乗り気になったみたいよ葵ちゃん!」

 会長は嬉しそうに葵に話しかけ、葵もそれに応える。

「そうね!何もなければそれでもいいし、一度行ってみましょう」

「それなら弁当持参でハイキング気分でいこう!たまには気分転換にいいだろ?」

 バケツは片手を上げ、みんなの顔を見ながら挙手をうながす。

 皆も続々と手をあげ、神咲山行きが決定した。


 翌朝、学園の正門前に集まった生徒会メンバー。皆リュックを背負いハイキング気分でウキウキしている。

「神ちゃんそれな~に?」

 会長が神人の横に座る犬を指差す。

「うちの飼い犬のポン太だよ。何かの役に立つかと散歩がてら連れてきた」

 神人は会長の質問に答えるとラブラドールのポン太の頭をなでる。

「まあ遭難することは無いと思うけど、犬は嗅覚きゅうかくが良いし何か見つけてくれるかもしれないわね」

 葵は何かに期待するかのようにポン太の頭なでてやる。


「神咲山の地図も一応持ってきた~。これで迷うことは無いと思うよ」

 ミカンちゃんがみんなに地図を見せている。

 ミカンて言うと八百屋さんのイメージだが実家は魚屋で3人姉弟の長女。


「ミカンちゃんナイスです!巫女は早起きして礼拝堂で皆の無事をお祈りしてきました」

 鳥居巫女ちゃんは名前からすると神社て感じがするけど教会のシスターだ。

 お父さんが牧師さんをしている。実家の隣が教会だ。


「ワンコ~お前それで山登るのか?山ナメてるだろ!」

 俺はワンコの格好が気になり指摘してきした。

「どこがおかしいのよ?サングラス?服装?サンダル?冗談でも顔って言ったら、ぶっ殺すわよ!」

「いや全部かな。まあ顔は可愛いとは思うけど、サンダルで山は怪我けがすると思う」

「可愛いだなんて神人も見る目あるじゃない」

 ワンコは可愛いにだけに反応して照れている。

「まあ危ないとこ行かないならサンダルでもいいしょ」

「あとで足痛くなっても知らないぞ」

(コイツにいっても無理だろうな。可愛い以外聞いてない気がする)

「ほいじゃ~みんなハイキング出発だ!」

 バケツの号令で神咲山へと歩き出した生徒会メンバー。


 俺たちはミカンちゃんの地図を頼りにハイキング道らしき道を登る。

 春先ともあり新緑が青々としていて空気もんでいる。

 道はいたってゆるやかで登山道の標識もあり迷うこともなさそうだ。

 神人はUFO目撃現場を葵に聞いてみる。

「葵が見たってUFO、山のどの当たりなんだ?」

「そうね~頂上よりやや右下てとこかな。光はすぐ消えたから場所の特定が難しいのよ」

「今って山の中腹当たりだよな?」

 地図を持っているミカンに確認をとる。

「そうだよ~。地図での現在地は中腹辺りだと思うよ」

 ミカンが案内板などを地図で確認して現在地を教える。

「どれどれ。この先を進んで行くと新登山道と旧登山道の二股ふたまたの分かれ道だな。葵の話からすると右の旧登山道が目的地に近くなるわけだ」

 神人は地図を指でなぞりながら目的地を確認した。

「途中に小川が流れてる場所あるから、そこで一時休憩するか」

「さんせーーい!」

 神人の言葉に生徒会メンバー全員が手をあげた。


 小川が近くなってくると俺はワンコが気になった。

 さっきから歩くスピードが遅い。やはりサンダルだからやっちまったか。

「ワンコ。足痛いんだろ?小川近くだけど我慢しきれないならオンブしてやるから言えよ」

「別に痛くないし~(フンッ)気にしないで先行きなさいよ」

「はいはい。強情ごうじょうなやつだね~」


 ワンコは片足をかばいながらヒョコヒョコと歩いている。

 後ちょっとだ頑張れよ!俺は心の中ではげました。


 ようやく小川が見えてきた。あちこち大小の石がゴロゴロしている。

 山だし水も飲めそうなくらい綺麗だ。

 だが上流でションベンしてるかも知れないから飲む気にはなれない!


 神人は小川近くに荷物を置くと皆に告げた。

「よし!到着~。みんな休憩にしよう。昼にはもう少しあるけど昼食にするか」

 昼食と聞いて急いで神人に駆け寄る会長。

「賛成!神ちゃん!弁当わけてにゃん!」

「なんだよニャンコ弁当持参じゃないのか!」


 会長は俺の横でゴロゴロ言って弁当を分けろと言う。どうしたものか・・・。

 会長1個じゃ済まないもんな~。以前、昼飯で全部取られたからな~。

 見せたらOUTだ!卵焼きでも1個取り出してやるか。

 神人はそう思うと弁当から1個つまんで会長に見せる。

神人:お手!

会長:にゃ~ん!

神人:チンチン!

会長:ヘッヘッヘッ!

「あんたプライドないのか!しょうがね~なホレ卵焼きだけだぞ。食べたら別のやつらに貰えよ」

「神ちゃんありがとう!」

 神人は食べ物の為なら何でもする会長をみて溜息をもらす。

 会長ははしから玉子焼きをパクリと口へ入れた。

「もぐもぐ。美味しい~♡」

 食べた後、即座にバケツのところへ飛んでいった。


 小川について20分ぐらい経ったか。みんな昼食を済ませたみたいだ。

 俺は小川近くの石に腰掛けているワンコが気になり声をかけた。

「足痛むんだろ。どれ見せてみろ。やっぱりくつズレして皮むけてるな」

「大丈夫よこんくらい!」

 ワンコの右足のくるぶしかかとの皮が剥けてる。

 神人はリュックからオキシドールとガーゼと軟膏と包帯を取り出した。

(もしもの為にと持ってきてて良かった。さて治療するか!)

「ワンコ、染みるかも知れないが我慢しろよ」

「うん。ありがと」

 意外とあっさり治療させたワンコ。いつになく汐羅しおらしい。

 まあ流石に我慢しきれなく痛いんだろうな。見た目でも痛そうだし・・・。

 俺はテキパキと治療し終えた。


「はい!完了。どうだ痛むか?」

「少し痛いけどさっきよりかマシかな」

「どうせオンブは嫌なんだろ?歩くスピード落とすからゆっくりでもついてこいよ。どうしても無理なら冗談抜きで俺に頼れ!バケツと分担すれば何とかなるはずだしさ」

「うん。そうする」

 ワンコはそう言うと座っていた小岩から腰をあげた。

 神人はワンコを連れて皆がいる場所へ合流する。

「それじゃみんな~行こうか!早く目的の場所行かないと日が暮れちまうからな」

 皆は腰を上げると神人と再び山道にでた。

 ワンコは女子の言うことなら聞くから俺は念の為、葵にフォローを頼んでおいた。再び旧登山道を登り始めた生徒会。


 30分くらい歩いただろうか、リードを外していたポン太が突然走りだした!

 それを見て慌てて声をかける神人。

「おいポン太!どこいくんだ!」

「どうしたの?何か見つけたのかしら!追いかけましょうよ!」

 生徒会メンバー全員はあっけに取られ立ち止まっていたが、葵の言葉で急ぎ足になった。

 ポン太は俺達のことなどお構いなしに猛スピードで道から外れた獣道けものみちらしき場所へ飛び込んで消えた。


 獣道を見つめる生徒会メンバー。神人は皆の意見を聞いた。

「これは並んで歩ける道じゃないな。ポン太は何か見つけたように飛び込んで行ったけど、みんなどうする?追いかけてみるか?」

「神ちゃん何かあるんだよ!行こうよ!」

「私も会長に賛成!何か見つけたに違いないわ!」 

「俺も怪しいと思う。ポン太も戻る気配が無いし行ってみるしかないじゃん」

 会長、葵、バケツが応える。ワンコ、ミカン、巫女もウンウンと言っている。

 全員が追跡に賛成。もしもの時の為に神人を注意をうながす。

「UFOはないと思うが危険ならすぐ逃げる準備な!そんときはワンコは俺にオブされ!いいかみんな離れるなよ!」

 そう言うと神人は先人せんじんを切り獣道を歩き出す。その後に続くメンバー達。

 道てよりやぶだな、あちこちに倒れた枝や長い草が道をおおっている。

 気分的に道と言えるくらいなものだ。神人は後続が歩きやすいように枝葉をどけながら進む。


 10分?20分?ほど獣道を歩いただろうか遠くでポン太が吠える声が聞こえる!

 それを聞いた神人は皆にストップの合図を出した。みんなは立ち止まる。

「ポン太だ!近いぞ!みんなココからは静かに近寄るぞ!」

 神人達は吠え声がする方向へと足を進めた。すると目前に信じられない光景が飛び込んだ!見たこともない物体が目前に見える。その物体に吠え続けるポン太。

「あれてUFOなのか?人らしき気配はないけど」

「どれどれ・・・マジ!何あれ!あれがUFOなの!」

 葵は謎の物体を見つめ驚愕きょうがくする。それに釣られるようにしげみから物体を覗く生徒会メンバー。

 皆、口を揃えて同じようにUFOなの?の連続。みんなすぐには近づけず様子を見ていた。しばらくすると物体の扉らしきものが開き中から男性が出てきた。

 吠えるポン太を見つめつぶやく男性。

「なんだ犬なのか。どうした、こんなところで?迷子なのか?」

 謎の物体から出てきた男性は宇宙人とはとても思えない普通の人だ。


「おい。あれどう見ても宇宙人には見えないよな。それに犬って言ったぞ!言葉がわかるし何か変だな?」

 俺はUFOじゃないかもと思った。冷静に見ていた巫女は皆に思ったことを話す。

「あれは何か発明品の実験でもしてるのでは無いでしょうか。言葉が同じですし、怖い人にも見えませんよ。悪人ならポン太の心配もしないと思います」


 確かにその通りだ。ポン太も謎の人物が出てからはえずになついてる感じがする。危険人物なら、ああはならないよな。

 ここはポン太を探しに来たい主として素知らぬ顔で俺だけ近づいてみるか。皆にそのことを伝えた。

「大丈夫?一応、私達は待機するけど危ないなら逃げてよね」

 葵が心配そうに俺の顔を見つめてくる。俺は解ったと答えしげみから飛び出した。


 一歩一歩、ポン太がいる場所へ近づき俺は声をあげた。

「ポン太探したぞ!こんなとこで何してるんだ。ウチのポン太がご迷惑かけたみたいですみません。さあ帰るぞ」

 そう言って軽く会釈えしゃくをしながら来た道の方へきびすを返そうとした時、謎の人物は声をかけてきた。

「君は誰だ!これを見られたからには生かして帰せないな!」

 そう言うと謎の人物はピストルの様な物を俺の方へ構えた!

 瞬間、俺は立ちすくんだ。これはヤバイ物を見てしまったんだ!

 政府か何かの極秘実験なのか?もうダメだこの距離じゃ殺される!


「な~んて冗談だよアハハハ。君のあわてぶり面白すぎだよ」

「えっ!えっ?なになに?どうなってるの?」

 俺を見て笑う謎の男。何がなんだか訳が分からずに戸惑とまどうばかり。

 その光景を心配そうに見ていた生徒会メンバーは安全と判断したのか全員俺の側へと駆け寄った。


「神ちゃ~ん心配したのよ~。絶対死んだと思ったんだよ」

 会長は泣きながら俺に抱きついてくる。

「スマン神人。俺もさすがにビビっちまって動けなかった」

 バケツは頭をさげてあやまってくる。

「神人先輩が無事で良かったです。もうすごく怖かったんですよ」

 ミカンちゃんの言葉に女性メンバーも相槌あいずちを打つ。


「いや~驚かせてすまなかったね。君達はこの人の友だちかい?」

 謎の男性は神人を指して訪ねる。皆はコクンと頷く。

 そんな中、超常現象の探求心たんきゅうしんあふれる葵が我先へと謎の人物に問いかける。

「貴方は誰ですか?ここで何してるんですか?その物体は何ですか?」

「ハハハ。お嬢さん質問の嵐だね。まあ指しさわりない程度で教えるよ」

 葵の突拍子とっぴょうし尋問責じんもんぜめに驚いた彼は少し考えた後、話し始めた。

『僕の名はジョン・タイター。未来人さ』














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