第7話 枯れ木に花が咲く。親友は花咲ジジイ?

天月あまつき学園・生徒会室】

「ニャンコ~。今日バケツみたか?ココ最近、姿が見えないんだよな」

「見ないよ。でも最近ていえば教頭先生も何か変じゃないかな」

 ニャンコ会長の一言でそう言えばそうだなと思う神人かみと。そこへ葵が話しかける。

「あっ!私みたわよ。何かコソコソしてたけど。誰かに追われてる見たいだった」

「追われてるね~。アイツ何やらかしたんだ?」


 カツカツと廊下から足音が聞こえる。あの足音はツボネだな!ガラガラと生徒会室の扉が開く。

「えーと貴方達、馬尻君は今日は来てないのかしら?もしくは見なかった?」

 入ってくるなりツボネ教頭はバケツの事をやたらと聞く。

「さあ、最近、生徒会にも顔出して無いから俺達もわかりませんよ」

「そうなの失礼したわ」

 ツボネはそう言うと廊下を足早あしばやに歩いて行った。

 これはバケツのやつツボネに何かやったな。もしかして不審者が出るてバケツのことか?あおいの話だとコソコソしてるし間違われても不思議じゃないな。


 ガラッ!突然開かる生徒会室の扉。神人にすがりつくバケツ。

「神人!追われてるんだ!かくまってくれ!」

「いきなりどうしたんだよ!落ち着けよバケツ。状況を教えろよ」

 息を切らしてあわてていたバケツは、次第に冷静さを取り戻していく。


 しばらくして事情を話しだしたバケツ。

「あのさ、ツボネの事だけどなおどかそうとしたわけよ。この前、神人がココでしてただろう。あれやったらさ、やっちまったのよ!」

「エッチか?いくら気絶してても、ツボネはヤバイだろ」

「ばか違うよ!気絶はしたんだけどな。う~ん、なんて言うか顔と顔がぶつかった訳よ。わかるか?」

「頭突きか!それは気絶するわ!お前、加減ぐらいしろよな。ツボネも一応は女だぞ」

「いや頭突きに近いけどそうじゃなくて、男と女が顔合わせたらするやつだよ」

「お、お前やったのか!俺は何も聞いてねー!俺を巻き込むな!」

「神人~そりゃないぜ。事故だったんだよ。まさかキスするなんて思っても見なかったんだよ。助けてくれよ~」

 あの正門で見たツボネの春はコレだったんだな。助けてやりたいがコイツ枯れ木に花咲かせてしまったから処置しようがないぞ!


 みんなも、そう思うかのごとくバケツに追い打ち。

 会長「バケツちゃんおめでとう!幸せに~」

ミカン「キスしたら責任はとるべきですよ~」

  葵「覚悟を決めておムコに行くしか無いわね!」

 巫女「結婚式はうちの教会に予約してください」

ワンコ「バケツも年貢ねんぐの納め時よね。あと1年は猶予ゆうよあるからいいじゃん」

バケツ「そんな~。俺たち仲間だろ、助けてくれよ~」


 こんなやつでも可哀想かわいそうではあるな。ツボネが鎮火ちんかする方法か~。どう考えても無理な気がする。ツボネがどう思っているかVC使えば状況だけ把握はあくはできるな。

「バケツ。お前ツボネにVC使ってみたか?使ってないなら気持ちを確かめるため、使いに行くぞ!」

「ああ、逃げるのに精一杯で使ってないや。それじゃいくか」


 面白そうねと全員出動する。まずはツボネ探しだが・・・。やはりこうなるよな。役員全員がコソコソと隠れている。

 そんな感じで校舎を見て回るが見つからない。外なのか?全員で中庭辺りまで来たときツボネ発見!

 中庭の大きな木のそばのベンチへ腰掛けているツボネ。何か考え事をしてるようだ。

 垣根かきねからのぞく俺たちはこれはチャンスと思いVCを使い各自チョイスを開始する。

 仮想空間に突入!選択肢がツボネの頭上にでる。


【悩んでいるツボネ】

A、あれは事故よね。でも初めてのキスなのよ。でも相手は生徒。あれから馬尻君の   事考えるとドキドキするの♡後一年すれば彼も結婚できるわよね!我慢だわ

B、会いたい会いたい馬尻く~ん♡もうツボネは貴方無しでは生きられないわ!今す  ぐじゃなくていい。ツボネをもらって♡

C、んもう!私の彼はどこよ!キスまで奪って逃げるなんて照れてるのかしら?もう  オバサンだけどやっと来たチャンス逃がすものですか!待ってて馬尻く~ん♡


「こりゃ満開じゃ!バケツよ南無なむ~」

 全選択の未来を見てチョイス解除のキャンセルをする神人。

「みんな見たか?どの選択肢の未来も捕まるまでバケツ追いかけてるぞ!これは未来を変える出来事でもないと無理だぞ」

「俺、高校卒業したら海外飛ぶわ・・・。もうそれしか無い気がしてきた」

 バケツはひざを折りしゃがみ込む。


「未来を変えるね~。ようはバケツじゃないと言いわけよね?」

 葵が聞いてくる。俺は考える。確かにバケツ以外なら・・・ん?

「それだ葵!バケツ以外ならいいんだ!あれ?でも以外て誰か居るか?」

「それでしたらVCで探せば良いかと」

 巫女ちゃんのナイスアイデア発言。

「なるほど、ツボネを好きな人を探せばいいのか!けどそんな物好きいるのかな」

「私達の価値では測れないこともあると思いますよ~」

 ミカンちゃんの言った言葉で思い出した。俺たちの基準で考えたらダメなんだ!

 この前のゲームで固定観念のモロさを知ったからな。探せばいる可能性はある!

「ミカンちゃんありがとう。大事なこと忘れてたよ。よし、みんな手分けしてVCで捜索だ!時間はかかるけど学校内に居るはずだ」

「神ちゃん生徒会での初の大仕事だね」

「神人みんな、ありがとう。俺もコソコソだけど探してみるよ」

 バケツは望みが出来て少し安心したようだ。


 俺たちは来る日も、来る日もツボネが好きな人を探し続けた。人の深層心理まで見てしまうから嫌な事もあった。

 それをいやす為は口実こうじつだが、女子をたまに見た。エロいのも見れた。

 そして俺たちは見つけた!頭が良い巫女ちゃんが見つけてきた人物は半年前に赴任ふにんしてきた

白井しらい 史人ふみと・30歳』先生だった。

 寝ても覚めてもツボネの事が好きだったが年下だし新米だからと打ち明けられずにいたと言う。俺はその先生に会った。


【神人の説得】

 先生お話があります。教頭先生なんですが、最近好きになりそうな人を見つけました。それはウチの生徒で僕の親友なんです。彼はツボネ先生の事を好きではありませんし、幸せにはできません。先生このままでいいんですか?

 先生の事は人づてに色々聞きました。ツボネ先生が好きなんですよね?

 気持ちを打ち明けるべきです!ツボネ先生は今まで男性付き合いがありません。

 でも40歳まで恋をあきらめてるわけでもありません。自分を好きな人がいればと、そう思ってるはずです。先生勇気を出してください。


【白井先生の言葉】

 僕は年が違うし新米だし相手にされないと今まで諦めていたよ。

 だが、このまま打ち明けずに後悔はしたくない!君の話を聞くうちに望みがあるかもと思い始めた。おかげで告白する勇気がもてた、ありがとう。

 決心した!今から僕の気持ちを伝えてくる!


 そう言うと先生は足早にツボネを探しに行った。俺たちは実を言うとお膳立ぜんだてをしていた。葵がツボネを中庭に呼び出していたのだ。


 中庭に座るツボネを茂みから見守る生徒会役員。白井先生がそこへやってきた。

「ツボネ先生お話があります。聞いてください!」

「は、はい!」

【白井先生のツボネへの告白】

 僕は貴方と10も年が違う赴任ふにんして来たばかりの新米教師です。

 ですが僕はツボネさん、貴方に出会った時に一目で心を奪われました。

 僕なんて相手にしてくれないだろうと半ば諦めて告白も出来ずに今まで来ました。でもやっと勇気が出てココに立ってます。

 貴方を思うと胸が張り裂けそうです!この気持に嘘偽うそいつわりはありません!

 僕と結婚を前提ぜんていにお付き合い願えませんか。お願いします!


「・・・」

 ツボネ教頭は泣いていた。大粒の涙を流しながら無言で泣いていた。

 そして泣きんだ時、答えた。

「よろこんで」

 ツボネが本当の春を迎えた瞬間だった。僕達は出てきて祝福をせずにはいられなかった。拍手はくしゅをしながら飛び出す生徒会メンバー。

 神人が初めに祝福の言葉をのべた。

「おめでとう先生!カッコ良かったです。ツボネ先生幸せになってください」

  会長「感動したよ先生。自分のことのように嬉しいよ」

   葵「ツボネ先生。本当に好きでいてくれる人が見つかってよかったね」

  巫女「お二人共お幸せに」

 ミカン「ツボネ先生うらやましいです」

 ワンコ「白井先生イケメンだし、ツボネ先生がうらやましいよ」


 次々と祝福する生徒会メンバーを見てツボネは不思議そうに聞いてきた。

「あなた達どうして?」

「僕が勇気を出せたのはこの子達のおかげなんです。しからないであげてください。それと君達ありがとう」

 白井先生はお礼の言葉を言うと俺達に頭をさげた。

「そうでしたの。素敵な人に出会えたわ。貴方達ありがとう」

 白井の言葉で納得したツボネも頭を下げる。


 ワンコが言うように誤算なのが白井先生がイケメンて事だ。

 これならツボネもイチコロだと思うけど、やはり白井先生の情熱だよな。

 元はと言えばバケツが原因だが、それがなければコノ展開は無かった。

 バケツは花咲はなさかじいさんだよ。

 見事にツボネと言う枯れ木に花が咲いた。

 当の本人は祝福には出られずに茂みにいるけどw

 これで、めでたし。めでたしだ。











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