第4話 『チョーダイ』は危険な香り

 神咲山かみさきやまハイキングから無事に帰宅した神人かみととポン太。

 俺は帰るなり母さんにガミガミ言われたが、ワンコが怪我したから病院に付き添ったと言ったら、あっさり許してくれた。

 妹のウララも退屈なのか感想を聞いてきたが、普通にハイキングした事だけ伝えた。VCの事は流石さすがに言えないよな。

 そして翌朝。生徒会に再び集まる役員たち。


 俺が生徒会室に入るとバケツが一番に話してきた。

「おっす神人!昨日帰ってからVCの使い道考えて、今日試しにテスト時間にやってみたんだ」

「でどうだった?上手く言ったか?」

「アレだめだわ~。時間かかり過ぎるし、テストと関係の無い選択まででるんだよ。まともにやるほうが早いかな」

 神人はバケツの話を聞き終えると、やっぱりか~みたいな顔をして話しだす。

「俺もやろうと考えたけど、結果が見えてるからしなかったぞ。人の答え見えても確認時間がな~。雑念があるのも問題だし」

「そうなんだよな~。何か方法が別にある気もするけど」

 バケツは上手くやれる方法を探っているようだ。

「テストに集中している、優秀な生徒の答えを見るなら1択しか出ないし、確認はいらないとは思うけど」

「お~その手があったか!神人、えてるじゃん!」

 言った俺も、その手があったか!と思ったが相手が無心だと意味を成さない。

 このVCは考え方一つで抜け道あるんだよな。


 バケツはまた変な言葉を言いだした。

「チョーダイも難しいもんだな」

「何だソレ?誰かにおねだりか?俺はやらんぞ!」

「昨日タイターさんにバッピーエンドめられたからさ~。また造語ぞうごを作ってみたんだ」

「どんなのだ?」

「チョイスが選択だろ、ダイバージェンスが分岐。合わせて『チョーダイ』だ!」

「お前変な言葉作るのは上手いよな。チョーダイって言うとマジおねだりかと思うけど面白くはあるな」


 神人の言葉にバケツは少しドヤ顔で応える。

「そうだろ~。チーム名も考えてるんだけどさ」

「どんなのだ?」

「チョーダイ生徒会とか、どうだ?」

「却下!ダサすぎだろ!それに何か物貰ものもらい集団見たいに見えるぞ」

「私もそれは嫌だな~。もう少しカッコいい名前がいいよ」

 聞き耳を立てていたミカンちゃんも駄目ダシしてくる。チョーダイまでは良いけどチームのネームセンスは絶望的だよな。


 そこへミカンの漫画を見ていた会長が不届きな事を言う。

「会長に弁当をチョーダイ!で決まりだよ」

「却下!ニャンコ、名前にかこつけて弁当を催促さいそくしてるだろ!」

 俺はニャンコなら言うだろうとは予測していたがマジで言うとは・・・。


「名前は置いといて本題はVCで何が出来るかって事だ。みんな何か考えたか?」

 神人はそれとなく聞いてみた。それに葵が応える。

「私は何に使えるか実験してみたけど。これ近くにいる人しか使えないみたいよ。テレビの人にやったら無反応だったから」


「私はお父さんに使いました。お父さん美人のお客さんだけお魚安くしてるんですよ!お母さんもイケメンさんばかり安くしてました。わたしへこんだよ~」

 ミカンは家族にVCを使い見たくないものを見たようだ。


 神人はVCで解ったことを皆に伝える。

「VCは簡単な選択肢だけじゃなく深層心理しんそうしんりまで仮想化するからな~。知りたくない真実まで見える。迂闊うかつに使うとショック受けるぞ」


「私は恋愛の悩み事とか使えないかな~と考えてみた。だけど、自分の深層心理だっけ?それ見られるのがね。知らない人の見るのなら良いけど」

 ワンコの言葉にドキッとした俺。お前の気持ち解るぞ!俺はワンコの深層心理を見てしまったからな~。好意を持たれてるのは嬉しいが今は答えられん!


 部屋の掃除をしていた巫女が応える。

「悩み相談は良いと思いますよ。それも奉仕活動の一端です。タイターさんが言った誰もが幸せの答えはそこにあるような気がします」

「そんじゃ生徒会改めボランティア部にするニャン?」

「それもうあるじゃん!ココは生徒会の実績を上げるためにも生徒会として行動しないと。う~んそうだな~」

 神人は適当に答えた会長にツッコミいれて悩む。そして方法の提示。

「人づてに聞いたり、目安箱みたいの置くとかがいいんじゃないか」

「神ちゃんソレで行こうよ!早速作って置いてくる!」

 そう言うと会長は空き箱にマジックで『お悩み相談は生徒会が受け付けます』と書いた。

「これでよし!ちょっと行ってくるよ」

 会長は箱を持って生徒会室を出て行った。


「ニャンコ行動力だけはあるよな。だからみんな拉致らちられたわけだが」

 神人が苦笑いしていると会長が戻ってきた。

「神ちゃん置いてきたよ!」

「はや!ニャンコどこに置いてきたんだ?」

「トイレだよ!だめ?」

「それ明日みたらティッシュだらけだと思うぞ。絶対ゴミ箱扱いだ!下駄箱の近くとかがいいぞ」

 それを聞いた会長は再びダッシュで飛び出していった。


ニャンコが出た後にあおいがVCを使ってみたい相手を言い出した。

「超常現象研究部が目をつけている子がいるのよ。あの子は宇宙人じゃないかって。その子、放課後によく運動場のベンチにいて空みながら考え事してるようなのよ。興味あるでしょ?」

「ただの考え事じゃね?悩み事には違いないとは思うけどさ」

「俺もバケツと同意見だ。でもま~見てみるか、助けになるかもしれないしな」

「そうこなくっちゃ」

 神人が行く気を見せると葵は張り切っている。


 そして葵、バケツと共に俺は運動場のベンチ近くにきた。

「それで、その怪しい人物はどこいるんだ?」

 神人が聞くと葵が運動場の見学ベンチを指差す。

「あそこよ、あそこ!あのベンチのとこ」

「あれって宇宙人じゃないのか!見たまんまだぞ!名前なんてんだ?」

「グレイ君だよ」

「まんまじゃんか!VC使うまでも無いぞ!そう思うだろバケツ」

「いや~テレビとか雑誌で見る顔と似てはいるけど。宇宙人なんていないだろう」

「だからVCの出番なのよ。見てみましょ!」

 葵はVCネックレスを取り出し意思表示する。

「本物ならシャレにならんけど見てみるか。で誰やるよ?みんなでか?」

「そうね~そのほうが良いんじゃない。みんなで見ましょ!」

「ドキドキしてきたな。じゃいくぞ!『チョイス!』

 神人の号令で葵とバケツもチョイスする。仮想空間へ突入!

 グレイ君の頭上に選択肢が映し出される。


1.地球もいいけど、たまには故郷ふるさとへ帰りたいな。

  M78星雲なんて遠すぎだよ!今度の夏休みに帰ろうかな

2.この前見た女の子可愛かったな~。

  生徒会役員の葵さんて聞いたけどお嫁さんにして星に連れて帰ろうかな

3.地球に来て半年。ココは意外と平和な星だね。僕の出番は無いみたいだ。

  食事も美味しいししばらくはこの星に居ることにしようかな


「・・・」

 神人、バケツ、葵は衝撃を受け言葉がでない。そして神人が一番に結論を言う。

「おい!グレイ君ウルトラさんじゃないのか!」

「は、速く光線出してください!」

 バケツはグレイ君に期待している。

「わたし絶対いやよ!お嫁さんとか冗談じゃないわ!」

 みんな支離滅裂しりめつれつな言動をしている。俺たちは見ないとよかったと後悔した。

 そして、バレて拉致らちされたら地球へ帰れないと思い、生徒会室へ急いで帰った。


「葵あれは危険だぞ!お前ターゲットされてるから気をつけろよ」

 葵を心配する神人。

「だれよチョイスしようなんて言ったの!私ウルトラの母は嫌よ!」

 人のせいにしている葵。

「あの頭はカツラで飛ぶんかな?見てみたいな~」

 夢を見続けるバケツ。


 様子がおかしい3人を見たミカンが話しかけてくる。

「みなさんグレイ君見てきたんですか?あの人、噂になってますよ」

「ミカンちゃん噂にもなるよ!あれはウルトラさんだ!」

 神人は確信を持ってミカンに応える。だがミカンの重大発言。

「違いますよ。有名な中2病らしいです。ヒーロー物が好きみたいで、いつも妄想もうそうばかりしてるそうですよ」

 全員「・・・」



「誰だよウルトラさんだ何て言ってるの!宇宙人なんて居るはずないぞ!」

 真実を知り恥ずかしい神人は人のせいにする。

「く~残念!俺は本物、見たかったけどな~」

 夢見る少年バケツは本物でも構わない。

「ウルトラの父に挨拶考えてたけど残念だわ・・・」

 苦しまぎれな葵。


 中2病恐るべし!妄想が見えてたとは誤算だった。ダイバージェンス(分岐)を見るまでもなかったな。ウルトラさんなんて言った自分が恥ずかしい!と安易に信用した神人は後悔した。


「そう言えば何か忘れてる気がするな?」

 俺がそれに気づいたのは数日してからだった。









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