第2話 驚愕!人智を超える力『VC』

 タイターと名乗る未来人の言葉に生徒会メンバーはキョトンとしていた。

 未来人と言われても、にわかには信じがたいものである。

 俺も新手の宗教勧誘か何かと思うくらいだ。

 だが得体の知れない物体がタイターの後ろにあるのも事実。

 あれがタイムマシーンなのか?

 そんな疑問を予想してたようにタイターは話を続ける。


「まあ未来人と言われても普通は信じないよね、ハハハ。後ろにある乗り物はタイムマシーンさ。仕組みなどは時代に影響を与えるから教えられないけど、中を見たいのであれば見せてあげるよ」

 そうタイターは言うと何かスイッチなようなボタンを押した。

 するとタイムマシーンの扉が開く。俺は見せてくれるのならと中をのぞいてみた。

 訳がわからん機器で埋めくされている。とても理解できるシロモノではないと俺は判断した。

 そして未来人と言うのも、あながちうそではないのかと思った。


「わーナニコレ機械だらけね。これUFOて言われても私信じるかも!」

 葵は初めて見る機器に興奮している。


バケツ:確かにテレビとかで見るタイムマシーンとかUFOとかと違うな。

 会長:はっきり言ってわからないニャン!

ミカン:計測器みたいなのついてますよ~。あれでどこかへ飛ぶのかな~。

 巫女:私達の技術水準で作れる代物には見えませんね。

ワンコ:私にも見せて!ナニコレ!イカしてるじゃない!


 誰が見てもタイムマシーンなのかな?くらいしかわからない構造だ。具体的な証拠がないしな~。結構何かの実験で、からかってるだけかも知れないけど。

 俺はタイムマシーンでココに来た目的について聞いてみた。

 タイターはどう答えたら良いのかなと言う素振りを見せている。


 そして口を開いた。

「そうだね~。富裕層ふゆうそうおとずれる幸運。貧困層ひんこんそうが思う不幸。これらが存在しない誰もが幸せな世界。そんなお伽話とぎはなしみたいな世界が存在するかもしれないと時空を旅しているんだ。この時代へ来たのは調査と補給や機器調整てところだね。この時代の人に会うのは想定外だったけど」


 確かにお伽話とぎばなしみたいな話だな。そんな世界があるのなら俺も見てみたい気はするけど、そんな話を信じる人はいないと思うし。そんな話をするタイターは狂信者きょうしんしゃなのかと普通は思う。

 だが俺のそんな考えもタイターが見せたある物で、在るかもしれないと思うようになる。


「この世界がもし、僕が望む世界になる可能性を秘めているのならアレを皆に渡しておこう」

 タイターはタイムマシーンの中から首飾りを取り出してきた。

 首飾りには小さな水晶が付いている。

「これはVC=『バーチャル・チョイス』と言う未来の玩具おもちゃだ」

『なにそれ?』と生徒会メンバー全員が口をそろえて、そのVCと言う玩具を見てつぶやいた。

「そして仮想選択の空間を作り出す装置でもある」

 タイターは俺達が耳にしない言葉を口にする。


 VR=バーチャル・リアリティ(仮想現実)なら皆、理解できる。

 だが仮想選択?意味がわかんない。

 玩具て言うからには選択肢が適当に出てくるゲームみたいなものか?

 多分みんなも、そんな物かもと思っているはずだ。

 だが現実は玩具のレベルではなかった!この後、信じられない事をタイターは話しだす。


「このVCは未来を予測するものだよ。人は皆悩んだりする時に、ある種、選択を求められるよね。その選択肢が見えるのがVC。ここまでは理解できるかな?」

 自信なげに神人が応える。

「なんとなく・・・。それって確実に選択と未来が見えるんですか?」


タイターが言う事が本当なら、これは玩具おもちゃの水準どころではない!

神の領域と呼べるものだ。タイターは話を続けた。


「確実といえば確実だね。ただし玩具と言うのには理由があってね、これは完璧では無いからなんだよ。一日くらいなら99.9%で選択とその先のダイバージェンス

(分岐)の未来が見えるから、ここまでは確実と言える。だが日を追う事に%が下がる。これは不確定要素が原因だ。こうなると確実性を損なう。わかるかな?」


「確かにそれだと完璧じゃないですね。でも1日の的中率が99.9%だけでも凄いと思いますよ。1日だけは完全に未来がわかるんですからね。でも、まだ試してもいないから、にわかには信じられないけど」

 神人の言葉にタイターは使い方を教えた。

【VCの使い方】

「それじゃ君、神人クンかなVCを頭からかけてみて。そして君」

 と葵を指差すタイター。

「今晩の食事のメニューでも考えてみてくれ。後は神人クンが【チョイス】と言って彼女を見ればOKだ。彼女が本当に考えているのなら選択肢が現れる。一応、未来の見方も説明はしておくよ」

【VC未来の見方】

「選択肢が出たら選択番号が数字やアルファベットであるはず。それを口にすれば選んだ先の未来が見える。選択し直す時は『リバース』終了時は『リリース』もしくは『キャンセル』と言えばチョイスが解除され現実へ帰れる。理解できたならやって見て欲しい」

 タイターの説明が終わると神人は実行してみることにした。

「だいたいは、理解できました。やって確認してみます。それじゃ葵、夕食のメニュー考えていてくれ」

「わかったわ」

 俺はあおいの方を向き『チョイス』と言ってみた。

 神人は仮想空間に突入!葵の頭上に選択肢が浮かぶ。

 それを見た神人は『何だコレ!』と間抜けな言葉。

【葵の選択内容】

A、今日はハンバーグ食べたいわ。さっき蚊に刺されてオマタかゆい~

B、カレーもたまにはいいわね。ヤダ~。パンツまで汗でビショ濡れ~。

  速くシャワー浴びたいわ

C、面倒だし今日はカップ麺でもいいわね。速く帰りたいな~


【神人が見るVC世界の感想】

 スッゲー!これがVCの世界か。選択が出てる時は周りが止まっている。て事は時間が止まるんだな。え~と、未来を見るには選択番号を言えばいいのか。

『C』と答えてみた。周りに居たみんなが消え、ビジョンが映し出された。

 初めて見る部屋だが葵がテーブルでカップ麺を食べている。

 こちらには気づいていない。試しに葵を呼んでみたが反応がない。

 未来の世界では俺は透明人間みたいなものか。

 葵はズルズルとカップ麺を食べながら『今日の未来人にはビックリよね~』など言っている。

 スゲ~間違いなく未来が見えてるよ!え~と、選択を選び直すのが『リバース』と答えた。なるほど戻った。

『B』と答えた。葵カレー食ってるなw。コレなんだ!コマ送り見たいに未来が横に動くのか!葵のやつカレーの次は着替えてる!風呂行くつもりか。

 コレは見ていたいけど、現実に帰ったらモッコリ確定でヤバイ!紫のランジェリーは見れたから一度帰ろう。現実へ帰るには『リリース』だったな。

 神人は言葉を口にした。映像は消え生徒会メンバーとタイターが目の前にいる。


「どうだい未来は見れたかい?」

「はい!ハッキリと(下着姿が)見えました!これってどんな仕掛しかけなんですか?」

【VCの原理】

「それは詳しくは言えないな。この世界にはまだ過ぎた技術だからね。つまんで言うならVCの仕組みは相手の精神感応粒子(サイコティクル)を読み取り仮想化するって事しか言えない。精神に影響してるから不確定要素も出てくるんだよ。分岐ぶんきした未来の映像で、その人がさらに迷い考えるなら道は無限に広がる。無心むしんな人にはVCは反応しない。と言っても無心になれる人などいないと思うけど。悩んでる人にはかなり有効に使えるよ」


「なるほど~。相手の精神を読み込んで、考えてる事を仮想現実にする装置てことですね。このVC悪用されませんか?宝クジが当たるか当たらないかとか、わかるんじゃ?」

神人のといに、その疑問が来るだろうとタイターは予測していたみたいに話しだす。

【神人の疑問解答】

「VCは大きく時代が変わる事象じしょうにたいしては反応はしないよ。あとVCを身に着けている者同士の精神は読み取れない」

「なるほど制限があるんですね」

「まあ、金銭的に低い事柄なら反応するかもね。ただし金銭が絡むと機能の寿命が持たない可能性がある。VCに付いてる水晶は寿命があるからね。そのうち消えてなくなるよ」

「ずっと使えるわけではないんだ」

 それなら金銭以外で使えばいいかなと思う神人。

「それもあるから過ぎた代物でも君達へ渡す気にもなったわけだ。使い方は他にもあって複雑だから、そこは省略させてもらう。君達で工夫して使い方を考えてみてくれ」

 そうタイターは言うと生徒会全員にVCを渡していった。


皆は貴重な物を落とさないようにと即座に首からかける。これで生徒会メンバー同士のVC使用は制限されたわけだ。突然、首飾りをもらい受けたバケツが奇妙な事を言い出した。


「タイターさんが言ってた幸福でも不幸でも無い世界って、ハッピーエンドでもないバッドエンドでもないって事だよな」

『う~ん』といいながらバケツは考えている。そして何かひらめいたようだ。

「バッピーエンドか!けどゲームじゃノーマルエンドてのもあるけど、それと違うのかな?」

 そんなバケツの話を聞いたタイターが応える。

「君は面白い事言うね。ハハハ。バッピーエンドかこれはいい!ニュアンスで言えばそんな感じなんだろうね。今度から誰かに説明する時に、その言葉を使わせてもらうよ」

 バケツの思いがけぬ言葉にタイターもたいそう気に入ったみたいだ。


「バケツ良かったな。けどノーマルエンドとバッピーエンドは何か違うと思うぞ。ノーマルだと変化がない世界だからな~。ゲームだと普段の生活に戻って終わりのパターンだ。誰もが幸せとは限らない」

 神人の指摘にバケツが応える。

「そうだよな~。似てるようで何か違うんだよな。まあこのVCで色々試していけば何かわかるのかもな」

 バケツはVCネックレスをにぎりしめて、これからの非日常を思いワクワクしているようだ。俺やみんなも同じ思いだと思う。具体的な使い道は分からないが貴重な物をもらったのは事実。俺たちはタイターさんにお礼の言葉を言った。

 そして在り得ない物を目にした俺達はタイターが未来人と言う言葉を信じた。




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