第52話未来

あっけなく、R-1の二回戦で敗戦した僕。


疲れ果てて、憔悴しきって、家に帰る。

そんな 時でも、どんな時でも、あったかく出迎えてくれる妻であった。


「あんた!冷蔵庫にプリン買ってきてるで。」


いちいち結果もきいてこない。

そんなもの、言わなくても、僕の顔を見たら一目瞭然だったのだろう。


世の中そんなに

甘くはないのだ。


この物語が、映画やドラマなら。

必死の努力が報われ、家族の支えがあって、ひとりの男が

R-1ぐらんぷりの決勝戦に進出して、勝利を勝ち取るのだ。


しかしこれは、現実なのだ。


必死の努力のすえ、やってのけた事といえば、

R-1ぐらんぷり、二回戦進出したのみ。

ただ、それだけの結果を出した。

ただ、それだけのストーリーなのだ。


てんで、ドラマにもなりゃしない。

もっと大きな事がなし得ないと。


しかし、それでも本当に必死でやってきた。

現実の現実の現実に生きている。


会社に勤めて、週に一回休みがあるかないかの状況で、

自分の許された時間を全て、お笑いの活動に注ぎ込んで。


R-1の二回戦までいけたら、大したもんだ。


ってゆう、結果しか生み出せなかった。


妻に言われるまま、冷蔵庫のプリンを取り出し、食べ始める。


少しずつ、少しずつ、

色んなものがこみ上げて、涙が溢れてくる。


妻のプリンは、格別の味がした。


「この子たちも、どんどん大きくなっていくね。」


妻の指差した向こう側には、長男と次男が寄り添って寝ている。


今まで、色んな事があったなあ。

ありすぎて、ありすぎて、胸がもう一杯なのに。


芸人を続ける限り、まだまだ色々起こるのであろう。


そっと、テレビを見ている妻の手を握る。


強く、妻が握り返してくる。


なんの会話もしなくても、これで通じる。

これでいいのだ。

僕ら夫婦は、これで成立しているのだ。


「一生、売れなくていい。」


妻はそう言った。

僕もそう思う。

そう思いつつも、人を楽しませること、笑わせることを辞めれない。


「パパ、頑張ってね。」


息子に言われたあの言葉。

いつかこの2人の息子にも、見せれる結果がほしい。


愛なんて言葉をたやすく口にするけれど。


これがまさしくそれなのだと。

誰に教えられる事なく、自分でわかる。


僕の物語は、まだまだ続く。

僕の戦いも、まだまだ続く。


このストーリーはこれからも続いて行く。


誰に読まれ、誰に共感されるのか?

僕には、全くわからないけれど。


お笑いの芸人は、過酷。

会社員の毎日も、過酷。

その過酷なもの、二つのバランスを取り続け、そこに家族を加えて、


三つのトライアングルの真ん中に僕はいる。


いつだって、このトライアングルを崩さぬよう

懸命に生きて行きます。


妻よ、ありがとう。

出会ってくれて、ありがとう。


たぶん芸人として、売れるよりも、そんな事よりも、

もっと大切なものを、神様は下さった。


僕は幸せものです。


そして、この物語を、読んで下さって、


ありがとうございます。


「一生、売れなくていい。」


その言葉があるから、頑張っていける事がある。


それに共感するかしないか。

どう思うかも、読んでいる、あなた次第です。


だけど、僕には、最高のほめ言葉です。


まだ、まだ頑張ります。

そして、 その先に何があるのか?


どんな未来が待っているのか?

僕ら家族に、どんな未来が待っているのか?


ただ、それが幸せな未来を手繰り寄せれるよう、

毎日努力するのは、自分次第だということ。


未来を手繰り寄せるため、明日も進みます!

明後日も進みます!


原田おさむは、今日も、生きています!!!


売れなくてもいいですが、そんなピン芸人がいること、


だけは、


知っていてくださいね!!!!!!


ご愛読本当に、ありがとうございました!!

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一生、売れなくていい。 原田おさむ @osamu

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