大切な友を取り返すため、少年は新たな世界へ挑む

異世界へ招かれる王道なファンタジー物に見えて、細部ではオリジナリティが光っている作品でした。
一般的にイメージされるような中世ファンタジーが舞台ではなく、古代アジアや中国といった世界観。腕に自信があるので、剣で悪い奴らをなぎ倒す……といった展開ではなく、文官としての地位を確立していったり。更には算盤を開発したりと、この作品ならではの展開が繰り広げられ、飽きることなく楽しめました。
そうした異世界の文化、風土が緻密に設計されており、文章と相まってとても丁寧な作品作りであるなという印象を受けました。
派手な描写やスピーディーな展開を求める人には水が合わないかもしれませんが、重厚で骨太なファンタジーを求める人はきっと気に入ると思います。作風は違うと思いますが、読んでいて『十二国記』が脳裏に浮かびました。

個人的に好きなキャラは、ニッチかもしれませんがズールが好きです。最初は卑怯者の小悪党だと思っていたのに……。ネタバレになるので控えますが、ああいう漢気を見せられると好きになってしまいます。ある意味卑怯なキャラですね。

それぞれの『鎧』や世界の真相が徐々に明らかになり。これからが本番といった雰囲気なので、今後の展開に期待したいです。
作品のボリュームに恥じぬ面白さでした。

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