あとがき

 さて、パンの為の仕事の四方山も、ここいらで宴も酣。

 長々とお付き合い頂いた皆様ありがとうございました。本文では歯切れを優先する為、断定的な口調とさせて頂いた事をお許し下さい。幾許かでもネタなり反面教師なり、お役立て頂けた様でしたら幸甚です。


 まあこのご時世、器用に上手く立ちまわって生きていくのが最上だとは思うのですが、筆者の様な前時代的出来損ないにあっては、中々それが難しい。仕事の最中も創作の事ばかりを考えてしまって、責任ある立場に移るにつれ「冗談じゃねえ、めうは創作したいんだめう!」と離職してしまう。そうして一ヶ月も作るうちにまた心は落ち着きを取り戻し、一方で貯金は底をつき「くっ、日雇いか日払い行くしかねえ」と重い腰を持ち上げる訳であります。


 そんな性分の方がどれだけいらっしゃるかは分かりませんが、そういうタイプの方にとっては、ある程度指針となる職業を示すことが出来たのではないかと思っています(はじめから安定した職業に就いて創作活動していらっしゃる方は、本当にネタ帳の一つ程度に読み飛ばしてくださいね。別世界です)


 もうね。分かりきってはいるんですが、創作が精神安定剤の一種なんですよね。それも麻薬規模の。ジャンキーですから、一時の安寧と引き換えに生活が崩れるという。まったく絶望的です。せめてこの麻薬が、世に受け入れられる類であったなら良かったのですが。


 最も今は幸いに、文筆活動に主体を移しているだけに、自分が作りたい作品以外のテーマにも手を出す事が出来ています(具体的に言ってしまうと、拙作で「◯◯の歌」と付いている作品は本命。それ以外が試行錯誤と捉えてください。例外もありますが)




「見守るだけの神は死ね。手を差し伸べるメフィストフェレスこそ、我と在れ」

 

 少々厨二的ではありますが、これは筆者が、常々自身に言い聞かせている言葉の一つです。

 あなたが世に憚られる仕事に、目的達成の為とは言え手を出そうとする時、周囲はそれを必ずや止めるでしょう「やめておけ」と。


 ですがそう制止する誰かは、あなたに何かを与えてくれるでしょうか。創作の為の寝所、資金、あるいは人手。言葉に足るだけの手を差し伸べてくれる誰かであるなら、その言葉には耳を傾けるべきです。

  

 逆にただ正論を吐くだけの、高座から見守るだけのご大層な主張であるのなら、それはさっさと蹴り捨てて前に進まねばなりません。びた一文払いやしない神の空論より、命と引き換えにでも金を差し出してくれるメフィストフェレスの囁きこそが、道半ばにある我らにとっては正義なのです。たとえ身体を売ったとしても、魂さえを守り通せるのなら、それこそが勝利への道なのです。


 陳腐な言い回しですが、絶対的な正義という概念は存在しません。誰かにとって好ましく無い事態は、別の誰かにとっては福音である事は多々あります。そう鑑みた時、たとえ世界の99%にとって悪魔であっても、自身にとっては天使である誰かをこそ、離さずに抱きしめるべきなのではなかろうかと筆者は考えます。


 外国が日本のアニメ産業を買い叩こうとしている。しかしそれは国内目線から見れば悪であっても、雇用が安定し、アニメーターたちの給与が底上げされるのであれば、彼らにとっては充分正義です。公営賭博がアニメ産業の下支えをしている。眉をひそめた方も多いでしょうが、それで過去作品が掘り起こされたり、新作のクオリティが向上するのであれば、ファンにとっては願ったりです。


 あなたの目的は何でしょうか。そして手を差し伸べてくれる人は誰でしょうか。その為に何か対価はいるでしょうか。魂の保証がそこにあるのなら、それ以外は全て捨ててしまいましょう。どう足掻いたって、我々はそれを為す以外には救われないのですから。




 どうか今は認められなくとも、これまで失っただけの救済が、あなたの渡世に訪れます様に。そして呪怨の様に生まれ落ちたこの世界で、せめて安らかなる終焉を迎えられます様に。


 そう切願し、本作の末筆に添えさせて頂きます。

 有難うございました。

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