フィクションであるのに、ノンフィクションと思わずにはいられない濃厚な物語、確かに実体験が生きている作品です。実際ぼくの親も何度も裁判をしたことがあるのですが、これほどに大変なものなのかとはじめて知りました。できれば訴状はいただきたくないものですが、それでも向こう側からやってきたときはこの物語を思い出してできるだげのことはしないといけないかもしれないなとも。それにしても相続はマイナスの場合は放棄しろと言いますが、期限があるんですね。気を付けよう。ためになる物語だったです。知ること大事だなぁと思わせてくれるとともに、しっかりとした文章に最後までぐいっと読まされました。
疎遠にしていた親類から突然、負債を相続することになり、簡易裁判所に呼び出される事態になった主人公。
その戸惑い、苛立ち、弁護士や身内の様子、裁判所内の描写……どれも、実体験を元にされているだけあって、とても現実味があり克明で、まるで読者自らが体験しているような錯覚にすら陥ります。
悪徳業者が、簡易裁判所をうまく利用して債権を取り立てているという話はちょくちょく聞いたことがあります。
自分はどこにも債務なんてないしと安穏とするのではなく、この主人公のように相続で巻き込まれることもあるのですから、もし万が一そういう事態になった時に、この小説は貴重な指針の一つになるのではないでしょうか。
そういった意味で、他に類を見ない貴重な小説だと思いました。
現代社会を生きる上での必読書ともいえるべきものを書いてくださり、ありがとうございます。