百合の域を越えています

『百合小説』という枠にとらわれずにその物語性、人物・情景描写(特に雪に関するところ)、息をするように活字を追わせるストーリーテリング、涙が出てから(あ、これ百合やったんや……)と気付きました。

 ええ。そういえばこの作品は百合でした。

 もともと結ばれにくいふたり――何も知らなかった裕香、諦められなくてどうしようもなくなった美和。

 これは邪推ですが、美和は美和の中の裕香を永遠の存在にしたかったのかもしれません。

『とがりながら震え』ていた好きの字が、東京行きではなく天国行きのきっぷであるとするなら、『ごめんね』『ありがとう』がその運賃であってほしいと願います。

 なぜって、美和も裕香の心に棘を刺したままでは旅立てませんから。