初のプロ棋士(≠女流棋士)を目指す少女。その師匠は弱小若手棋士で……

プロ棋士ながら、四段昇格(プロ入り)時点で燃え尽きたようになり、無様に負けを重ねる三東。そんな彼の元へ月子というボロボロの少女がやって来る。
三東と同郷で、アマチュア棋士を父に持つ彼女は、その父が借金を抱えたせいで満足な生活もできず、プロ棋士になって金を稼ぎ借金を返したいと言う。連絡を取ろうとした彼女の親は夜逃げしていて、叩き出すわけにもいかず月子を養いながら同居生活を始める三東。
貧乏生活が長くてピザもパソコンもろくに知らない月子だが、将棋の腕は着実に上げていく。一方の三東は相変わらず勝てないが、その将棋はほんの少しずつ変わりつつあった。

いまだ存在しない女性のプロ棋士。それを目指す少女の物語ではあるが、主人公はその師匠である三東である点が特徴的。彼が覚醒したかのごとく活躍するわけではないのだけれど、自分を見失って漂うように生きる前半も、月子との生活を経験して何かを掴んでいく後半も、棋士としての描写にリアリティが感じられてどんどん読ませる。
二人の生活は偶然の出会いがもたらしたものであっても、そこから二人が選んだ人生はたぶん必然。そんなことを、最終話を読みながら思った。

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