冴えないプロ棋士と、どん底の女の子の不器用な二人三脚

 主人公の三東は、さっぱり勝てず、熱意も失いつつあるプロ棋士。そんな三東のところに、あるとき弟子入り志望の小汚い女の子、月子がやってくる。両親の借金を返すためにプロになりたいと語る月子を弟子として受け入れ、奇妙な共同生活が始まるのだが・・・。
 将来の展望を持てない三東と、まともな生活さえしてこなかった月子。ひどく重苦しい雰囲気で始まる本作ですが、そこから光が差し込んでくる展開が美しい。人付き合いが苦痛で、世間知らずの月子。そんな彼女の弱さを支え、見守るうちに、どこか諦めていた三東の心にも変化が訪れます。やがて才能を見せ始める月子。師匠にして天才ならざる三東は、果たして勝ち越しを決めることができるのか。
 凡人が天才にはなれなくても、きっと前へ進むことはできる。残酷なリアルさと希望を両方持ったよい物語でした。

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