4 復讐鬼の真意

「ヤス先輩、どこに行くんですか?」

 無言の夕食が終わり、玄関を出ようとした俺をひねりが呼び止めた。

「散歩だ。おまえもくるのか?」

 ニヤリと笑いかける。

「いえ……」

 ああ、そうだろうとも。自分まで殺されたらたまらないだろうからな。

「俺を疑ってるんだろ?」

 ひねりは否定しかけて思いとどまったらしい。

「……はい。すみません」

「正直だな。じゃあ証拠は?」

 言葉に詰まるひねり。

 ……まあもちろん、予告状は俺が出した物だ。

「先輩、どうして犯人はあんな予告状を出したんでしょうか」

 『俺が出した』と言わない所が気がきいている。

 俺はそれには答えず外に出た。

 涼しい夜風が全身に当たる。

 ……『どうして』だと? 

 これが復讐であるとともに、『ゲーム』だからさ。

「どうせ殺すなら楽しまなくちゃな……」

 ひとり歩きながら呟く。

 『できるかぎり遊戯的に殺す』。それが俺の復讐の方法だ。単に殺すだけでは飽き足らない。

「さあて、あいつに真相がわかるかな……?」

 これはある意味、ひねりのために用意した趣向。あいつがいつもユイと探偵の真似事をしているから、わざわざこんな計画を立ててやったのだ。

 そう……あれは予告状というより挑戦状なのだ。探偵気取りのひねりへの。

「……さあ、宴の始まりだ」

 俺は復讐に向けて動き出す。

 ――いま、この瞬間から。

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