誇り高き精神こそ、真の勇者の条件

かつての英雄であった『勇者』の称号も、長い年月を経て風化しその誇りは錆び付いた。
そんな勇者を嫌う主人公のユアンが、勇者として覚醒し――。と、王道ながら新鮮味のある導入だと思い、面白い設定だと思いました。
文章はテンポ良く読みやすいものでありながら、戦闘シーンにはこだわりや実力がかいま見られ、冗長さを感じることなくサクサクと読み進めることができました。
何より、ユアンの誇り高き精神性がこの作品の最大の特徴だと感じ、好感の持てる主人公というだけで、物語に没入することができました。

ただ全体的に堅実な作品だと思いましたが、その分派手さやキャッチーな要素が少なく、戦闘シーンなどももう少し改良の余地があると思いました。演出や疾走感などが増せば、この作品の武器がより強まると思いました。
加えてユアンの目的意識が薄く、『成り行きで王都に向かうことになった』というストーリーラインは少し感情移入しにくいのではないでしょうか。

勇者として覚醒したユアンが何を成し遂げたいのか。それを明確にすれば、より面白くなると思います。
実力は確かにある作品なので、今後の展開に期待したいです。