注 詩作 「砂山(さざん)」 お題(とある日記から)





手の指の股からサラァサラッとすり抜けるみたいに父の脳は私を忘れた。


人の関係は連鎖する。父はその父の愛を受けず、

でも惜しみない愛情を私に注いだ。


若き父はだから、

我が子と接することに悩んでいたと大人になった私は思う。 






  良き父は無理をしていたのだろうか? 






星影の小径。父がまだ幼き頃の歌。波を立て、風呂場ではしゃぐ父の歌。


視界をゆがませる、不安はもう無い。

叱られると、父はキョトンとした顔をする。


妻を母と思い。私を姉と見る。

……それも笑えるほど、私は大人になった。



  父の、その言葉を、打ち消す音の波を私は知らない。








人は大きな山を作る。 たとえそれが風に流されようとも。



砂の道によろけながら、歩く姿がかわいい。

そんな場面でも、人は不意にかわいい。



忘れることが死なら、想い出せばいい。 


背中は冷たくとも、影から光の中へ。













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短編集(ワンシート・ショート) プリンぽん @kurumasan

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