内容は英国を舞台にしたアイドルサクセスストーリーです。展開こそ普遍的ですが、歌手を目指す二組(エメル&デブオタ、リアンゼル&ヴィヴィアン)の悲喜こもごもが丁寧に書かれています。
デブヲタの小さな嘘とリアンゼルの黒い行いが火種となり、オーデション決戦中にエメルとデブオタは強制的に引き離されます。一人残されても、デブオタの思いに応えて渾身の歌を披露したエメル、自身の行いを省みて、公開謝罪に踏み切った上で棄権しなかったリアンゼル……純粋に夢と向き合い、最高のステージングを魅せた二人の姿は圧巻です!
この後に続くラストも爽快で、清々しい気持ちになれました。終盤に差し掛かったら出先で読まないでください、ハンカチorティッシュが必須になるため注意が必要です。
空想の物語であれ、アイドルというものの本質が詰め込まれている宝箱のような作品でした。
私自身もアイドルに詳しいわけではありません。でも、だからこそ読んで良かった。アイドルは全くコアな人達の趣味ではなく、人間が本来持つ“本能”から求められているものなのだと、この作品が教えてくれました。
全体通してコメディ調。ところどころのバカバカしさにクスリとさせられてしまうからこそ、その反動で、登場人物達の真をつく言葉や行動に大きく心を動かされます。
日陰者達の大逆転劇には、アイドルファンでなくても爽快感が得られることを保証します。
「欧米追従の作品で話も稚拙」
戦後まもなく歌手育成の映画を見に行った高見順はその作品をこう評価しました。
こういったアイドルや歌手の育成小説、映画は何万と作られており、本作もまぁそんな感じかな、と思って読み始めました。
とんでもない。
最初職場で読んでいたのですが序盤で2回泣いて、1回声を上げて笑ってしまい「大丈夫ですか?」と心配されました。
話自体はどこにでもあるお話なのかもしれませんが、『主人公』がどこの作品にもいない位、壮大なインパクトがあります。
またヒロインの心理描写、ライバルの心理描写、心の移り変わりが解りやすく書かれており大人から子供まで読める事でしょう。
終盤には2回声を出して号泣してもう職場で読むのは無理と判断。
家で読みましたがまた号泣で「うるさい」と犬に怒られました。
こんな感動して笑って泣ける作品初めてです。
高見順もこの作品で作った映画を見たら「ほぅ」となったに違いありません。
本当に感動しました。
この作品は私の様に地面を這って生活している人間にとって何か心の中に暖かい物を送り届けて下さいます。
素敵な時間をありがとうございました。
まずTwitterで宣伝とタイトルを見かけたのですが、いつもはほぼ全スルーなのに、何故かすっごく気になってしまって。そこの掴みからしてもう、他作品とは違うものを感じました。
そしてデブオタが伝説の歌姫を育てる、というインパクトに引きずられて読んでみたら、がっつり正統派エンタメで、もうわくわくしながら読み進めました。リアンゼルは憎ったらしいし、エメルは頼りないし、そんな中デイブ君のかっこいこと!作品と作者さんを重ね合わせて読むのは邪道だと思うのですが、どうしても読みながら、まったく知らない作者さんとこのデイブ君のイメージが重なっていって……。
負けない、潔い、かっこよい!こんな男性だったら、たとえ見た目がデブオタだって、それはエメルも恋に落ちますよね。
そして私のお気に入りになったリアンゼル、最初はとってもいやな子だったのに、彼女のとんがった部分はそのままに、どんどん成長してキラキラしていく。ヴィヴィとの関係もとても愛おしくて、最後はエメルを応援していいのかリアンゼルを応援していいのか、もうどっちも幸せになって!という気持ちでいっぱいに。
キャラの話はこれくらいにして、物語全体の話も。まず、とても読みやすかったです。文章も上手なのですが、それだけではなくて、上げて落として拾って上げて、の流れがとても絶妙で、微笑ましく応援していたらだんだん雲行きが怪しく……これはツライ流れになってしまうのでは……と心配していたら、すごーく辛くなる前にちゃんとどのエピソードもキャラクターも救われるシーンがやってきて、そのサイクルが気持ちよくて、優れたエンターテイメント作品というのはこうやって読者を引っ張って行ってくれるのだなあと感じました。
最近は滅多にオンノベを読まなくなっていたのですが、久しぶりに一気読みしてしまいました。とても楽しかったです。
また、別の作品も読ませていただこうと思っています。
素敵な物語を読ませてくださって、ありがとうございました!
タイトルから浮ついたよくあるラノベかと思ってたんです。
けど、読んでみたら普通に素晴らしい文学作品でびっくりしました。
と、いう言葉でこの作品を片付けることはできない!!
タイトル詐欺とかそういうレベルじゃない。
皮肉と奇矯な人物によって塗り固められて、そういう風に見えなくもないが、違う。この作品の本質は、そんな薄っぺらいところにはない。
キャラクター達が発する言葉は洋画の台詞回しを彷彿とさせ。
描かれるシーンはスクリーンに映し出されるように鮮やかで。
登場人物達が心を通わせるシーンは最高にドラマティック。
作中に出されるゲームや歌詞といった小道具は、現実世界への敬意を匂い立つほどに含んでいる。
そしてなにより素晴らしいのは、王道を踏まえつつ登場人物の心の機微を炙り出すために用意された最高のストーリー。
軽い気持ちで映画見に行ったら、今年一番の傑作を見せられたようなそんな気分ですよ、今、僕は。
思うに、深い失意の底にある少女を、ちょっと間の抜けた陽気な太っちょの男が、はげましてレディへと導くというのは、名作映画のシナリオとしてありそうなものではないでしょうか。
それがちょっと、日本のオタクだっただけで。
そう思うともうね、本当にデイブというキャラクターが愛おしい。
被ったダンボールを突き破って、自分の大切なレディのために、踊ってくれるこの愉快な男を、どうしてただのキモオタ・デブオタと切って捨てられようか。
これで映画を一本取るべきだよ。
誰か舞台化するべきだよ。
映像化したモノを僕はみたいよ。
これは間違いなく傑作。
カクヨムに居ながら、一年近く読まなかったことを激しく後悔する作品でした。超オススメです。