小説家になろうから追いかけてきました。
ほかのレビューにもある通り、とにかくバトルの描写がすごい。
様々なシチュエーション、様々な武器を用いての戦いが描かれるが、どれも迫力たっぷり。
架空の西欧風世界が舞台となっているが、政治体制や社会情勢の作り方が実に上手い。封建制から中央集権に移行しつつある状況であることがはっきりと描かれており、WEB小説でよくある安易な「中世ヨーロッパ風」世界観に辟易している身としてはポイントが高い。
主人公以外のサブキャラも、美少女からおっさんまで皆生き生きとしており魅力的。
分量は多いが、数万~十万字程度で話がまとまる一話完結タイプであり自分のペースで読み進めることができるので、気負わず挑戦してほしい作品。
2017.6.4レビュー改訂
何といってもバトルが熱い!
主人公マーシャ・グレンヴィルとその周囲の個性的なキャラたちが、ある時は巨大な陰謀に立ち向かい、またある時は剣士としての誇りを胸に死闘を繰り広げ、またある時は不可解な犯罪に迫ろうとする。バラエティー豊かな物語に説得力を与えているのが、やはり多くのレビュワーさんたちが賞賛するように、迫力ある戦闘シーンを描き出す筆力だと思います。
第一話『剣士マーシャの酔憶』よりも、第二話『剣士ヴァートの回生』のほうがややラノベ寄りでしょうか。ヴァート少年の周りに集まってくる凄腕の美少女たち、でも不愉快なハーレム要素はありませんからご安心を。
完結済みの最新話『剣士マーシャと怪盗』もまた、満足いく内容でした。迫力の忍者(?)バトルも面白かったですが、話が進むにつれて、登場する各キャラの背景や人間関係が深く掘り下げれらるのがすごくいいです。
池波先生の『鬼平犯科帳』がアニメ化され、時代小説ジャンルが再び脚光を浴びている今、このジャンルが次のブームを作ってくれればと願っている私にとって、今一番お勧めするのが『剣雄綺譚』であります。
50万字以上もあり、読み応え充分。
読み中途でのレビューをご容赦ください。
女流剣士マーシャの侠気、その人情、人柄など、年代の差にも関わらず、なぜか、秋山小兵衛を連想させられました。
弟子のミネルヴァはさしずめ佐々木三冬、という印象です。
秋山大治郎に当たる登場人物は不在なものの、ミネルヴァのボディガードがとてつもなく魅力的。
最近の映画だと「キングスマン」に登場する、女用心棒ガゼールを思い浮かべました。
以前、パラサイト・イヴの瀬名秀明氏が「日本の剣劇と西洋ファンタジーの融合は面白くなる」と語っていたことを思い出します。
アクション描写、剣戟描写もさることながら、個々人の情感を大切に、しっかり、しっとり丹念に描くなど、人物描写にシンパシーを覚えました。
自分自身も書きたいもの、書いているものは、基本的に魔法や便利モンスターの出てこないファンタジー世界なので、とても素直に世界に入り込めます。
今後読み進めていくのが楽しみです。
目指せ、ファンタジー界の池波正太郎!
精巧に作り込まれた世界観が細やかな筆致で描かれており、王都レンの空気が伝わってくるようです。ちょっとした食事のシーンや賭け事の場面などから、この世界で生きるマーシャたちの暮らしが感じ取ることができます。
そして戦いの場面は圧巻の一言。作中には様々な流派の武術が登場しますが、その質の伴った描写からはそれらの武術が実在しているようにさえ感じられます。特にアイの話で登場した『雷電の歩』には唸らされました。パワーやスピードのみでなく、やや意外な形の奥義です。作中では剣対剣だけでなく拳術や様々な武器を持った相手や、一対多数などとバリエーション豊かな戦いが描かれています。
今後もマーシャ達の生きる姿を追いかけていきたい。そう思わされる作品です。
ネット小説で、大人(というより、おっさんですが)の再読に堪える小説に出会えるとは望外の喜びである。
手に汗握るチャンバラ、多彩な登場人物、一話ごとに趣の異なる展開など、賞賛すべき点は多数。一見、重厚で古風な語り口に見えながら、実はストレスなく読み進められる文章も良い。また、架空の都市を舞台にしながら、「江戸情緒」ならぬ「レン情緒」を感じさせるあたり、作者の実力であろう。久しぶりに、心から「ワクワク」できる小説に出会えたと思う。
「ライトノベル」を卒業して、次に何を読もうかと迷っている中高生の諸君には、ぜひ『剣雄綺譚』を手にとってほしいと思う。きっと、古いようで新しい娯楽小説の世界の虜になることは請け合いである。
さらには、書店の新刊棚を毎月埋め尽くす時代小説の読者であるおっさんたちにも勧めたい(まあ、こんなところを見てるはずないか)。あなたがたが読むべき次の小説は、意外なところに転がっているのかもよ。
作者キャッチコピーのとおり、まさに「新しい時代小説」です。しかも、単に舞台や人物を異世界に置き換えたというだけでなく、この小説にしかない魅力に、読めば読むほど引き込まれていく、そんな小説です。
登場人物がみんな生き生きしていて、いつのまにか自分もマーシャたちと一緒に酒場で宴会しているような気分になったかと思えば(料理もすごく美味しそう)、戦闘シーンでは緊迫感とスピード感がすごいです。
全話を読みきるには相当時間がかかりますが、読み始めればすぐにハマれること請け合いです。もし書籍化されたらシリーズ買い確定。海外ドラマとかで実写で観てみたくなりました。
完走しました! 続きが早く読みたいです!
エンタテイメント小説としての完成度が高く、一度読み始めたら止まらなくなる魅力を持った作品だ。西欧風異世界が舞台だが、魔法やモンスターといった要素はない。そこで繰り広げられるのは、剣戟の音響く胸躍る冒険譚である。多くの読者に自信を持ってお薦めできる。
本作の優れた点は主に二点。
何といっても戦闘シーンに迫力がある。多人数が入り乱れる乱闘シーンもテンポよく、躍動感がある。登場する架空の武術には、
「そんなの無理だろ!」
と突っ込みたくなる部分もあるが、それもまた楽しめる要素の一つ。
次に、人物造形が秀逸である。単なる記号的なキャラクターではなく、苦悩しながらも前向きに生きようとする人物たちが、物語に奥行きを与えている。主役級だけでなく、脇役やモブに至るまで生きた人間としての手触りを感じる。
日本の大衆文学には、「剣豪小説」と呼ばれるサブジャンルが存在する。何しろ数十年かけて多くの作家・読者によって作り上げられてきた分野だけに、フォーマットとしての完成度は高い。他方で、時代小説特有の用語や設定に馴染みのない(主に若い)読者には、読み始めようにも敷居が高いという面がある。
作者の目のつけどころは、おそらくそこにあるのだろう。ファンタジー小説やライトノベルを読み慣れた読者にはお馴染みの道具立て(無敵の戦闘メイドなんかも登場)を駆使しつつ、その骨組みは紛れもなく剣豪小説だ。まさにハイブリッドなエンタテイメント小説である。
分量は多いが、タイトルのついたエピソードごとに話が完結しているので、どこから読んでもよいだろう。個人的には、第一話「酔憶」または第二話「回生」のどちらかを最初に読むのを薦める。
ただ、エピソードを重ねるごとに、話のスケールがやや小さくなっている感もないではない。第一話、二話のような、緊迫感あふれる長編の登場を待ちたい。
2016.3.26追記
「剣士ヴァートの初陣」および「剣士マーシャと怪盗」第一話までを読了したのでレビューを追記。
本作は、天下無双の剣士、マーシャ・グレンヴィルが活躍する痛快な剣戟アクション小説であると同時に、若き剣士ヴァート・フェイロンの成長を描く物語でもあるという側面を持つ。この「成長」というテーマに真正面から取り組みながらも、高い水準の娯楽性と両立させる作者の手腕に脱帽するしかない。
WEB小説界隈では「武闘大会編」に突入するのは鬼門であり、物語が停滞する要因とされているとも伝え聞く。本作の「初陣」編はそのような心配は無用である。迫力ある戦いが小気味よく語られ、読後感もすこぶる充実している。
とにかく「読んで面白い」物語に飢えている読者には必読の作品である。本作が広く読まれることを願ってやまない。