知者不惑仁不憂
君胡戚戚眉雙愁
信步行來皆坦道
憑天判下非人謀
用之則行舍卽休
此身浩蕩浮虛舟
丈夫落落掀天地
豈顧束縛如窮囚
千金之珠彈鳥雀
掘土何煩用
君不見
東家老翁防虎患
虎夜入室銜其頭
西家兒童不識虎
執竿驅虎如驅牛
癡人懲噎遂廢食
愚者畏溺先自投
人生達命自灑落
憂讒避毀徒啾啾
現代語訳
智者は惑わず仁者は憂いずと言うではないか
なのに君は何故眉を顰めて悲しそうにしているのか
足に任せて歩けば道は全て胆道である
真の裁きは人ではなく、天が下すものだ
その天が自分を求めてくれるのであれば行こう。そうでなければ休んでいよう
この体は大海原を行く虚舟のようなものだ
一人前の男は小さな事で悩んだりはしない
顧みれば自分はまるで、手足を縛られた囚人のようではないか
高価な弾を使って鳥雀を撃つ必要があろうか
土を掘るのにどうして古の名剣を使う必要があるのか
見たまえ。東隣りに住んでいる老人が虎のことばかり心配していたら、ある夜虎が入って来て老人の頭を食いちぎってしまった
西隣りの家の子どもは虎を知らない。知らないということは強いもので、恐れる気持ちがないから牛を追い払うように竿で虎を追い払ってしまった
痴人は食物が喉に詰まることに懲りてついに食を断ってしまい
愚者は溺れるのを恐れてみずから水に飛び込んでしまう
人生、天命のいかなるかに達すればさっぱりしたものである
他人の中傷を避けようとして、啾々と憂い悲しむなどつまらないことではないか
明の時代の大思想家、王陽明の詩です。なんと鷹揚とした詩でしょうか。こんな風に生きたいものです。
幕末の志士たちは王陽明を尊敬し、啾啾吟を暗記したそうです。
自分も彼等に習い、この詩を暗記して、自分の人生の糧としていきたいと思います。