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 現実と異世界と伊勢海。

 今まで描いた自分作品をダーっと見ると、現実を舞台にしたものが多かったりする。
 理由は至ってシンプルで、「僕は異世界どころか伊勢海にすら行った事がないから」だ。

 どういう事か解説すると、よく「異世界やファンタジーは作り物の世界」などと言われたりする事がある。では僕達は現実をどれだけ知っているのだろう?
 例えばインターネットで何か「自分が体験した事がない事」を調べたりする。それでわかったつもりになる。しかし、実際に体験してみると全然違う様に感じるものだ。

 それは当たり前の事で、まず、全ての情報を文字にする事はできない。正しくは「文字にする事はできるけど膨大な時間と労力を消費する」であり、そんな情報量を全て書いたり読んだりするのは人間の能力を越えている。だから「文字化する事ができない」としたところで同じ事だろう。

 二つ目に、書き手と読み手の理解と解釈がある。
 例えば目の前に居る人、天才でも凡人でも誰でも良い、そういう人があなたに何かを伝えようとする。あなたは正確に全てを理解できるだろうか。
 僕は無理だと思っている。あなたに語るその人が自分の考えを正確に言語化できていない問題もあるし、その人がその言葉を使う意図まで読み取るには、その人の頭の中を覗くしかない。更に、その人がより正確に情報を伝えようとしたなら言葉の数が膨大になり、その一つ一つを解読するというあなたの仕事量が増える。かといって、簡単に伝えようとしたならば全てを語る事はできない。文字が、言葉が多かろうが少なかろうが、完全に理解できない事に変わりはない。
 だから僕らは色々な言葉達を独自に噛み砕いて解釈する。自分が理解しやすい様に。でもそれは自分の中だけで行われる事なので、あなたに語った人の理解から見たあなたの解釈は間違いだったりする。
 そんなあなたの解釈をブログか何かで発表しよう——その情報は正確なのか。読み手が独自の解釈なしで理解できるのか。 

 三つ目は「全てを書かない理由がある」だ。
 この三つ目は単純で、情報には明かせる情報と明かせない情報がある。それは記事に取り上げた物事がネガティブに伝わらない様にする配慮かもしれないし、書き手のリスクを減らす為なのかもしれない。
 
 上の三つの理由から、僕らは体験した事以外は理解できないと定義する。

 全てを書きたくても書けない。
 全てを書けたと思っても、それが正しいとは限らない。
 全てを書いてしまったなら意図しないリスクを生み出す可能性がある。

「そんな情報を読んで理解できたとしても全てを識った事にはならない」

 そういう事だ。

 じゃあ体験した事は理解できるんですね?
 と、問われたとする。
 可能だろう。長い時間をかけたならば。
 
 例えばあなたが何か仕事を始めたとする。
 キッチリとした教育を受け、仕事ができるようになる。
 それは全てか。否。それはその場所での仕事の仕方を覚えただけ、だ。同じ職種の別な職場に移るとする。そこでは皆んな別のやり方をしていた。それでもあなたが元々居た職場と同じ様に仕事が成立している。生産性にも大した差はない。その場所その場所によって仕事に対する理解と解釈が違うのだ。
 そしてそれはどれもその場所に合ったやり方である。効率が悪かったとしても、間違いだったとしても、その場所ではそれが最適だったりする。無理に変えようとすると綻びが生じ、それに合った人達は残り、合わない人は消えていく。結果的に「新しい場所とその場に合った新しいやり方が生まれた」だけなのだ。
 一つの場所だけで体験を成そうとしても「全て」を理解した事にはならない。全てのやり方を覚えたとしてもシチュエーションによっては対応を変えざるを得ない。別のやり方を生み出す必要に迫られる事もあるし「その新しいやり方」は以前のあなたにとって知らない事だったはずである。「極める」という事には莫大な時間を要するのだ。

 ここまで長々と書いたが、簡単に言おう。

 上の文章を読んだ上であなたは本当に「現実を知っている」と誇る事ができますか?

 という事。

 僕は創作物に於ける、現実も、異世界も、そして伊勢海も、大した違いがない様に感じている。
 伊勢海を舞台にした創作物を見た事はないが、もしあったとしてもこの感想は変わらないだろう。

 どれも作者の脳内で作られた、作り物の世界、なのだから。

 つまり僕が現実を描いたとしても異世界を描いたとしてもクオリティはそんなに変わりませんよ、ってオハナシ。

 ちなみになんでこんな文章を書くのかというと、こうやって文章にして自分の考えを整理すると、なんかインスピレーションが産まれるから、です。

 終わり。

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