実は僕、転職を二回している。
高卒で自衛官になり、そこで貯めたお金で資格を取って美容師になり、そして現在、増援屋の作業員として働いている。
もう二週間経ったのであるが、そこで思ったこと。
人間のやる仕事に大した違いはない。
これだ。
どんな職場でも、
仕事ができる人。
自称で仕事ができるとしている普通の人。
自己評価がそこそこで、やっぱり普通の人。
自称で仕事ができるとしていながらも、あんまりな人。
仕事ができない人。
かなーり大きく分けて、こういう人達がいる。
ちなみに美容師で仕事ができない人は、勤めてから一年経たないうちに辞めるか、スタイリストデビューしてからやっぱり一年くらいで辞めちゃうので、記憶が薄い。
自衛官の時は「なんで空挺団に仕事ができない人が存在するのだろう?」とか思ってた。
あ、嫌味とかじゃなくて素朴な疑問だ。「空挺隊員は一般隊員の三倍の技能を有するものとする」みたいに教本にもハッキリ書いてあったし、適性検査を受かった上で配属されてたので、若き日の僕の疑問は当然だったと今でも思う。
特に、入隊して三、四年くらい経っていた先輩とか、陸曹に上がっていた先輩にもダメな人がそれなりにいたので、本気で首を傾げていた。
機関銃手と通信手と分隊長を兼任させられた演習では「足引っ張るなら頭数に入ってくんじゃねぇ」とすら思った。本番ですらない訓練の状況で、しかも行軍中に戦死扱いであとは残った人達に自分の任務を丸投げである。
で、先輩のケツを蹴ったりとかもした。ああ、まだ共感能力の薄かった十代の頃のアレなので、許して欲しい。
何故こういう人達がいるのか。
今の職場で、ちょっとだけわかった気がする。
まず、お仕事ができる人ってのは、かなり少数。元請けの社員の人達の中でも上の人達。
んで、大半は僕も含めてフツーの人。足りない経験を頭を使ってカバー、或いは体力でカバー、若しくは「先読みをする癖」をつけたり「初めての作業はとにかく覚える事に集中する癖」をつけたりして頑張る人だ。
最後に、仕事ができない人達が残る。
一括りに「仕事ができない」としてはいるが、「全く経験がない作業を四十を過ぎてからやってる人達」もいるので、そういう人は除外。たぶん過去の職歴を活かせるような柔軟性が衰えており、逆に邪魔になっていると考える。
そういう人でも積極的にコミュニケーションを取ろうと努力する上で謙虚な人は、結構歳食っても働けてるように見える。
そうじゃない人達、特に「十年以上下請け作業員をしている」のに「何すれば良いかわかんないような顔でぼーっとしてる人」と、「いつまで経っても作業が遅い人」を考える。
まず、言われた事を理解していない。
まあ「働きながら覚えるタイプの仕事」では、教える人も作業の期日の関係上、説明が端的になっちゃうので、そういう部分もあるけど、僕が思うのは、
「なんでわかんないなら聞き返さないのか」と「説明が足りない部分を『考える事』で補おうとしないのか」ということ。
喋らないタイプの人は、わかんない状態でなんとなく、或いは不安そうな顔で作業に入っている。「十年以上働いてなんでわかんないの?」というアレもあるけど、たぶんこの人は十年以上ずーっと誰にも何も聞かずに同じ「わかる部分だけ」で仕事をしていたのだろう。
喋るタイプの人は逆に「明らかに違う聞き返し方」をしている。ほんの数秒でも考えてから発言すれば馬鹿にされる事もないだろうに。更に言葉のルールが他の人と違うので「あいつ話通じねえ」とか陰口を言われている。おまけに言われた事を勘違いしてる事も多く、作業は遅いし変なトコで丁寧さを出していて求められてるトコは手付かず、みたいな感じ。
能力の問題?
そうかもしれない。
たださ。そういう人って家に帰ってから「仕事の事を全く思い出してない」んだろうなぁとか思う。
いや、「怒られたっていう嫌な体験」は思い出すんだろうけど、「何が悪かったのか」を自分で考えてないんじゃなかろうか。仕事中という限られた時間で覚えるのが無理なら「それ以外の時間」を使うしかない。仕事中の体験を思い出したくなかったり面倒に感じるのもわかるんだけど、だからいつまで経っても同じ立ち位置から抜け出せないんだと思う。
基本的に他人は、他人の欠点を指摘しない。だって、他人に指摘したら自分も言われる可能性が増えちゃうから。ならば、自分でどうにかするしかないでしょう?
あとは「最初に教わった事が『全て』だと思っている問題」もある。
教える立場の人目線で考えたなら「初心者に余計な事して欲しくない」だろう。
ある程度場数を踏んだなら「マジでやばい事」は大体わかる。わからない人は「やばいミス」をしちゃうので、そうなるくらいなら「ゆっくりで良いから言われた通りにやって」となる。
でも、ずっとそれだと、ずっとそのまんま。
教わった通りにやって「他の人達と明らかにペースが違う」なら、やはり「今のやり方に問題がある」と考えねばならない。
上記した「他人の欠点を指摘するのが面倒」と「余計な事されて責任を負いたくない」があるので、誰も教えてくれないし、誰も助けてくれない。誰かのやり方を「盗んだり」「自分でアレンジ(工夫)してみたり」「自分で調べる」必要があると思うのだが、いかがだろうか。
よく「教える奴が悪い」
みたいな事を言う人が散見されるけど、学生の頃のテストだって、塾とかに行かなくても百点満点取れちゃう人と、塾とかに行ってるのに赤点を取る人の両方がいる。教える人が優秀でも、結局「個人の差は個人の問題」になる。
更に、一番の問題は「周囲にその人が萎縮してしまっている」ということだ。
聞きたい事があっても聞けない。
声が小さい。
あれこれと「後ろ向きな事」を「仕事中に考えちゃってる」から、「注意力と集中力がない」。若しくは「全然別の事を考えてる感」まである。
大して問題ないように見えるかもだけど、作業内容によっては、かなりキケン。
たまーにニュースで見たりする「現場の事故」は、こういう人達が引き起こしてる事「も」多いのではなかろうか。
あとは、他人のミスをボロクソに言うことにより「自分のミスが帳消しになるとか勘違いしてるタイプの『本質的に同じような人』」もいたりする。他人のミスなど口に出さずに反面教師にするだけで良い。もし指摘するなら「自分は絶対にやらない」という覚悟が必要だと感じる。
取り敢えず、
他人と話しやすい環境は自分で作る。
わからないまま、ぼけーっとしない。
自分のミスは自分で見つける。若しくは誰か仲の良い人を作って訊く。
「できねーんだからしょうがねえじゃん」とか諦めない。
自分の時間を使ってでも、できるようになる。
という、「能力とは違う『心構え』」が大切だよなぁ、とか思う、ただの感想。
寝る前に五分くらいだけでも、お仕事の内容を思い出して欲しい。そしたらたぶん、なんか変わると思いますぜ。酒呑みながらでも良いから。
終わり。