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中華そば唯一つ

何系だろうが、何にこだわっていようが、
どこの何とコラボしていようが、
どのメディアで取り上げられていようが、
そんなものは関係ない。

美味いか美味くないか、
それが全て。

"御託"はいいんだ。


『中華そば』とだけ書いてあり、それ以外に何の変哲もないメニューが並ぶだけ。
それなのにその『中華そば』がやたらと美味い店が世の中には存在する。


そんな言葉がふと脳裏に浮かび、
これまたweb小説にある作品にも言えると思った。



私の敬愛する書き手のもう一人、新樫樹様について少し書こうと思う。


御託になってはつまらないので、なるべく完結に書こうと思うのだが、
新樫様の作品は、冒頭のやたらと美味い中華そばの如く、


何も飾らず
前触れもなく澄み渡り心に響く
経験という出汁から取れる生粋のスープが産み出す
"本物の味わい深さ"とその良さを思い出させてくれる。

ちゃんと積み重ねてきたものがあるから、あのような素敵な物語が書けるのだと思う。

それは本物の書き物であり、ほぼ短編物しか拝読していなくても小説だと感じる。


"御託"を並べないといけないのは、その作品に自身がない事に他ならない。

"本物"であるならば、夢中になって読むのだから。



読んだ作品が十中八九、私の心に響くために、ちょっとひと泣きしたいと思ったら、
ついつい新樫様の作品を読んでしまう。

素朴な情景ながらも、人が成長していく様を登場人物の心境とともに描かれる作風の良さは、
自分の弱さを認めた上で前向きになろうと思えた人間にしか決して分からない。

また、親子関係が作品の背景によく絡んでいたりするので、その悩みや問題が日常的にある世代にとっては共感せずにはいられない事情もあるだろう。


我が国には他国にはない"出汁"の文化があり、それは材料としては至ってシンプルなものだが、とてもとても奥が深いのだという。

外国産の小説も味のある面白い作品は多いのかもしれない。

しかしながら、"出汁"のように表立っては殆どメニューにも描かれぬような下地であっても、繊細かつ実直に旨さの深みを高めようする心意気がこの国にしかない文化なのは間違いのない事実だ。

そこが良いところで、私の読書の時間の満足度に関わるとても重要な要素でもあるかと思う。


これは小説であっても同じことだと考える。

その繊細かつ実直な物語の先に、温故知新の素晴らしい文学が産まれてくる事を期待している。


あゝ、なんと御託の並んだ独り言になってしまった事か。

私のような自信のない偽物は、こんな場所でこそこそと自身の思いの丈を吐き出すしか能がないので、書き留めた文書は箪笥の引き出しにでも閉まっておくのが正しいのかもしれない。

それでも今はまだこの場所に残しておこう。

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