• 異世界ファンタジー
  • SF

卯月の初心者さんのための短編作成講義の実況中継?【最終回?】

いやはや、思いつきではじめた実況中継講義も今回が最終回です。

急に終わりかい! と言われましてもね。講義テキストの『夕方五時のリズム』の旬も過ぎたようですし(投稿サイトでの短編の命は短し)、そんなに引っ張れないもので。

あと昨日書いた『蛍』ですけど興味があれば。

一話五千文字のSFといいながらテーマは「戦争」のせつない系ですから、ちょっと読み手を選びます。「特攻」というワードに強い忌避感のある方は止めておきましょう。

この『蛍』はカクヨムの自主企画にあわせて書きました。これから書き始める方は、「お題」や「テーマ」指定のある創作系の自主企画に参加をおすすめします。卯月のフォローしている方たちなら、きっとお優しい方たちばかりですから(念の為企画趣旨はしっかり読みましょう。最低限のマナーです)、勉強になることと思います。

かの文豪、谷崎潤一郎も『文章読本』の中で言ってます。「感覚を磨くこと」の話の中ですけど、どうすればいいかというと。第一が「出来るだけ多くのものを、繰り返して読むこと」次に「実際に自分で作ってみること」です。

自主企画には上限の字数指定がある場合も多いですから、作品が思ったよりも短くなってしまっても問題ありません。卯月の『夕方五時のリズム』は二千字以内の制限でした。この二千、三千あたりの文字数はネット小説での読者さんが離脱しにくい文字数とされています。練習するのもまずはこのくらいを目指されると良いのではないでしょうか。

卯月の『蛍』は五千字。企画がたしか一万字までだったと記憶しています。一般的には話数を分けて投稿するべきものなのですけど、今回は一話五千字に。途中で区切るのが難しい構成でしたのでそうしました。卯月自身もどんな人気作でも一話三千字をこえるとキツくなるのですが、挑戦的、実験的にやってみました。はじめに書いたように読み手を選びますので、興味ある方がなんとか最後まで読み切っていただけないものかと工夫しました(ブラバは覚悟のうえ)。現在の卯月の実力ではあれが限界ですので、みなさんはこのハードルを越えられるよう目指されるといいかと思います(おそらくそれでカクヨムでは中級?)。

ああ、さっき書いた谷崎は「読む」際に「音読」することを推奨しています。これは卯月もついサボることがあるのですけど、特に書いた自分の作品を声に出して読んでみると、自分だけでも多くのことに気づくことができます(今回『蛍』の人称表現のミスに気づけなかったのは音読をサボったせい)。

では、テキストにもどります(いや、戻るって冒頭から中身に触れてないやん)。

第五回は「オチから決める」ことと「キャラの数」でしたかね。二、三千字の限られた字数では一文字の価値が大きいので無駄遣いができません。登場人物の名前ですら長いものは避けたくなります。漢字一文字でも良いのですけどそうすると中国、台湾、韓国の方たち大集合のアジア系小説しか書けなくなってしまいます。香港だと横文字ですかね。

ちなみに卯月がはじめてお使えした会社は台湾華僑系の方がボスでした(脱線します)。まあ同じアジアの人ですから見た目では分かりませんし、本人も国籍以外は日本人です。大阪の有名な高級な夜の街とか連れていっていただきましたねぇ。ドラマとかに出てくるような座るだけでとんでもない金額だったりするようなお店。それを年の近い我々若手を引き連れて行く。お会計はもちろんカードですが当然最高位のヤツで、金額は先輩が覗いてましたけどえげつなかった。いまも手広くやっておられるようで何よりです。普通に親族がハーバード卒だったりでリアル上流階級の方の生活を覗けたのは貴重な経験でした。

えっと、「文字数すぐに枯渇する問題」でしたね。

名前はお好きなものを。キャライメージが想像しやすいものが理想。特徴づけたい場合は変わった名字や名前を使うと思いますけど。西尾維新の阿良々木くんとか戦場ヶ原さんとか、初見では読めませんのでルビをお忘れになりませんように。短編ではあまりこだわる必要はないので、ここは趣味の領域。

小説はWHYとBECAUSEで推進されると言います。印象的な書き出しで強いWHYを喚起させたなら、BECAUSEを小出しにしながら徐々に明らかにしていく。こんな感じ。

気がつけば字数ガ足リマセーン、困リマシタデス。とならないように短編でも慣れないうちは設計図、プロットを作った方が良いと思います。このプロットなるもの、商業作家さんでも人によって様々らしく、卯月では上手く説明できませんし、動画やネット記事でも具体的な情報は少ない。ですから、長編の場合ですがフィルムアート社の『SAVE THE CAT』のBS2シートをアレンジして使ってます。映画の脚本のなので……。ああ、フィルムアート社さんの記事というか有用な情報はカクヨム内にあります。検索窓に打ち込めば普通の作品形式で無料で読めます。さらに有用だと思われる(卯月は読んでない)関連の創作論もならんでいます。どうぞそちらを有効活用くださいまし。

二、三千字の短編においては、第五回でも書いたゴールイメージが明確にあればそこまでは必要ありませんね。一番伝えたいシーンのために「必要な」会話、地の文を効果的に配置していく。短編ですから(たぶん長編も)読んだ読者さんに届いたり、印象に残るのはワンイメージ。それを意識すれば短編の構造は自ずと出来上がるのではないでしょうか。文章を削るのも加えるのもその目的のためであれば、自分で判断もできるかと。ここは自分の主観を信じればよいです。何と言ってもこれがモノ書きにとっては楽しい作業なのですから。楽しんで企んでください。

再び以前触れた「書き出し」に戻ってみます。

小説家の島田雅彦の言葉を引用します。

「まず、書き出しには、それなりの魅力と気取りを備えた一行、そして一段落を用意しましょう。冒頭から、次のページには何が待っていて、主人公はどうなってしまうのかという読者のワクワク感をひきおこさなければなりません。つまり展開とは、読者がその小説を読みすすめていくうえでの、鼻の先の人参、あるいは無事にゴールテープを切らせるためのエンジンです」(小説作法ABC)

そして他でもよく聞くジェットコースターで喩えています(はじめのファーストドロップの重要性について言っています)。

この考え方が小説の基本。

ですけど、文字数の少ない短編ではジェットコースターの走行距離も短くて、カーブやらなんやらの仕掛けは用意できません。初めのファーストドロップ。出発してゆっくりと静かに坂をのぼり、一瞬の制止からの急降下。ここに勝負を賭けなければいけません。

文章力のある作家様なら、いつも書いているとおり力でねじ伏せてしまうのでしょうけど。急に文章力なんて身につきません(ひたすら意識的に書きつづけるしか……)。ひとつの方法として『夕方五時のリズム』ではこんな方法を。

ざっとテキストを見るだけでスクロールしていただけると分かるのですけど。

前半、長めの地の文が並びます(ネット小説では地の文が厄介な存在ではありますけど)。そして後半につれて地の文の量が減っていきます。そして長回しの会話文がきて、最後のほうは短文構成ですよね。

読む場合、読者さんは地の文でペースが落ちます(地の文を飛ばしてしまう困った読者様が多いという現実があるのがネット小説のつらいところですけど、今回は無視)。そして会話文を続けて加速、なんとかこの長回しの会話文へと繋げようとしています。このお兄ちゃんのセリフが卯月の一番読んでもらいたいところです。その後は再び短めの会話文をならべて急加速し、最後の爆発シーンで余韻を残して終わらせています。上手くいったかどうかは置いておくとして、会話や地の文、その長短によっても読者さんの「読み」をコントロールできるのではないかという実験的な企みを入れています。

このようにたくさん「意識的」に企んで作品を「書いて」いくと良いのではないかと卯月は思うのであります。

最後にこの実況中継講義ですが、書きたいけどまだ書いたことがないという初心者さんに向けたものですけど。実は、一番は卯月自身のためであります。

教える仕事をしたことがある方なら良くお分かりかとおもいますが、学び方の「最強」の方法は、「誰かに教えることです」。東京の有名な中学受験の算数の先生が昔おっしゃっていましたけど、こどもを教えれば教えるほど算数なんて(特に難関中学受験)こいつら、できなくなる。教えているこっちがどんどん賢くなりよるって言ってました。これは本当です。

ですから、自分の近況ノートなんかに自分が学んだことや気づいたこと、反省ばかりじゃ暗くないますから、うまくいったことなんかを残してみるのは良い方法かと思います。「読む」中心の方も書いている作家が何考えているのか知りたい人もいるかもしれませんし。「書く」中心の方も他の作家さんが何を考えているか気になりますよね(だから数は少ないけど創作論は他と比べて同業に読まれやすい)。

少なくとも卯月はそれが最優先で近況ノートを書いてます。ですから実況中継講義はここまでですけど、これまで通りこれと似たようなことを書いていきますので、引き続き卯月の安否確認のついでに覗いていただければ幸いです。

いつもながら無駄に長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。

ではまた。











コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する