町内の東側に流れております一級河川。
通称、スモール・ガンジス河、略してスンジス河。
その川べりをわたくしは散策いたしておりました。
すでに陽射しは夏の気配。春と秋が、なんだか瞬間移動してこの頃では夏と冬の二季と感じますのは、わたくしだけでしょうか。
ふと奇妙な物体が目に入りました。
照りつける太陽の光を乱反射させるような、ショッキングピンク。
そのド派手な色彩に、眉をしかめてよ~く目を凝らせました。
アバンギャルドなピッチピチのランニングウエア、パッツンパツンの黒いレザースキニーパンツでオネエ座りをなさっている後ろ姿は……
「あら、イリアママ?」
さようでございます。
普段は地獄の十王のひとり、閻魔大王としてお仕事をなさり、休日には賽の河原二丁目で「バー・イリア」のママとして趣味のBLを満喫されております。
「イリアママ~、おこんにちはぁ」
わたくしは手を振りました。
イリアママは針金のような鍾馗ひげのお顔を向けられます。
「まあ、つばきちゃん」
ため息を吐くような小さなお声に、わたくしは眉をしかめて横に腰を降ろしました。
イリアママは太い指先でタンポポをもてあそびながら、はあっと切ない息をひとつ。
「どうかなさいましたのかしら、お元気がないような」
「ええ、ちょっとね。おセンチな気分なの」
「この世にも稀な十連休は、いかがお過ごしでしたのかしら」
わたくしの言葉に、イリアママはさらに大きなため息をひとつ。
「それよぅ、それ」
「えっ」
「十連休はね、地獄でもおやすみをいただいていたのよ」
「は、はあ」
「それでさあ、賽の河原二丁目界隈でお店をやってる他のママたちとね、LCCを駆使して遊びまわっていたのよ」
「格安航空会社、ですわね」
イリアママはスンジス河に目を向けながら、もう一度ため息をひとつ。
「すっかり遊び慣れちゃってさあ。もうお仕事をする気がね、どこかへ飛んで行っちゃったのよう」
「まさか、五月病? いやいや、ちょっとお待ちになって。だってイリアママの本来のお仕事って、地獄の裁判長なわけであって。十日もおやすみをとること自体、いかがなものかと。さらに職場放棄って……」
わたくしのやや強い発言に、イリアママは両手で顔をおおわれました。
「もうイヤッ! アタシはもうお仕事にもどれない!
あっ、そうだわっ。つばきちゃん」
「はい?」
「あなた、どうせ年中フラフラなさってるのだから。これからさ、アタシの替わりってことで、地獄で裁判長をやってちょうだいな。アタシのお仕事用の道服を貸したげるから」
「いや、貸したげるって。
わたくしはそんなに暇人ではありませぬ」
プリプリ怒るわたくし。
それにいたしましても、この十連休は皆さまいかがでしたでしょうか。
~~♡♡~~
拙作に、とても嬉しいレビューやお★さまを頂戴いたしました。
近況ノートをお開きでないおかたには、こちらのノートにて失礼いたします。
『みかんをのせた、もっちん』
時織拓未 さま、「祠の由来らしい心温まる良い話でした。」
誠にありがとうございます♬
『二十歳のおばあちゃんへ』
@k-kco324さま、
朔月さま、
お★さまをありがとうございます♬
『契約遂行』
時織拓未 さま、「お試しに一服。」
誠にありがとうございます♬
『農協のATM』
時織拓未 さま、「金の亡者がゾンビの如くに襲ってくる話…FAKE」
心より御礼申し上げます♬
『影法師がひとつになるとき』
@k-kco324さま、
叶 良辰さま、
お★さまをありがとうございます♬
春川晴人 さま、「夢を見ること。恋をすること。」
誠にありがとうございます♬
ユーリ・トヨタ さま、「幼い頃からの恋心を大切に守ってきたもの同士の素敵な恋物語です!」
誠にありがとうございます♬
@v4lmet さま、「尊い淡い想いがめぐり」
誠にありがとうございます♬
謡義太郎さま、
お★さまをありがとうございます♬
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このたび、何を血迷いましたのやら、恋愛長編物語を書いてしまいました。
しかも無謀なことに、「第2回ビーズログ小説大賞」に応募までしてしまいました。
高尾つばきの長編は、短編以上に読まれない。
その通り、でございます。
春の陽気に浮かされた、と思っていただければ幸いでございます♡
今作『影法師がひとつになるとき』に、ちょっぴり仕掛けを施してございます。
お気づきになられたおかたも、いらっしゃるやに思います。
つまんねえ仕掛けだぜ、ったくよう。とおっしゃらずに。
たんにわたくしの、長編物のクセを出さないようにとの計らいでございます。
いつもいつもお目通しくださり、ありがとうございます!
それでは本日はこのあたりで、皆さま、ごきげんよう♬