むかし、むかしのことでございます。
ヘンゼルとグレーテルという兄妹が飢饉のために、親から捨てられてしまいました。
仲の良い兄妹は、森の中をさまよっております。
ヘンゼルはオカッパヘアに銀縁の眼鏡をかけ、なぜかその当時に流行している女子の歌い手集団の似顔絵を描いたシャツを、でっぷりと太った身につけております。
グレーテルはワイン樽を重ねたような巨体に、なぜか七色のきらびやかなドレス姿です。
頭頂部で髪を結わえた恰好は、まるで東洋の国のスモウレスラーのようです。
飢饉のわりにこの兄妹が肥えているのは、もちろん親の分まで根こそぎ食べてしまうからなのでございました。捨てられて当然、かもしれません。
「ねえ、ちょっとタマサ、いえ、ヘンゼルおにいさま」
「あまりその巨大な顔を近づけないでほしいんだぜ、だぜえ。
ナーテ、いや、グレーテル」
「ワタクシ、ひもじくてひもじくて」
「さっき山賊を襲って、持ってる食料を全部奪って食べたんじゃ~ん」
「まだ足りないわ」
「オオッ、グレーテル! ほら、森の奥に家があるんだぴょ~ん」
「まさか、魔女が作ったっていうお菓子の家かしら!
ほら、走るわよ~!」
二人は太った身体をゆすって森の奥へ一目散に走りました。
「ああっ、こ、この家は!」
グレーテルは目の前に現れた家を一目見るなり、驚愕の表情を浮かべました。
ところがヘンゼルは舌なめずりしながら、薄気味悪い笑みを浮かべているではありませんか。
「むうっ、むむむっ。これは凄いなあ、グヘヘヘッ。
マニア垂涎の家だぜ、だぜえ」
ヘンゼルの細い目に、狂喜の色が浮かんでおります。
森の奥に建つのは、お菓子でできた家ではありませんでした。
なんとその家は、何千体という歌い手集団の女子たちをリアルに再現した、フィギュアを組んでできた恐怖の(あ、一部のマニアは狂喜乱舞する)人形屋敷だったのです。
ミニのドレスや女子高生の制服、タンクトップにミニスカートを着た人形たち。
それが手足を絡ませ、一軒の恐るべき家となっているのです。
「イヤ~ン! こんなコワイ家、食べられないわよう」
「なに言ってるんだよう、よう。
これこそ究極の、アイドルオタクのための聖なる館じゃ~ん。
ぐふっぐふっ……グフフフッ,フ~~~ッッ!!」
ヘンゼルは歓声というよりも悲鳴を上げながら、その家へ突入するのでした。
魔女は子どもを誘い込むために、お菓子の家を作ったつもりでした。
ところが呪文を唱えるときに、流行歌をハミングしながら呪文を口ずさんだために、こんなオゾマシキ家ができてしまったのでした。
おしまい
ああ、おとぎ話を描くつもりが、おぞけ話になってしまいました。
こんな日もあるわねえ。
気を取り直しまして、カクヨムさまをチェ~ック!
あ、新作「その家だけは、やめておけ!」にレビューを頂戴しております!
13←ひとみ さま、
ひとみちゃん、ご執筆で超ご多忙なのにご覧くださり、またレビューまでいただきまして誠にありがとうございます!
このスタイル、いわばつばき流のことが大好きだなんて、嬉しい♡
むっちゃんは吝嗇家なんですけども、一度決めたならトコトン頑張るタイプの女の子なんです☆
心より御礼申し上げます♬
あ、「面妖な金属男」にレビューをいただいております!
林檎亭爆発丸(´・ω・`)さま、
大変ご無沙汰いたしております。お忙しい中、お目通しくださり、またレビューまで頂戴いたしまして誠にありがとうございます!
ああ、紹介文にふれてくだすって嬉しい♡
こんな奇天烈な物語にお付き合いくださるなんて♪
つばきをご存知のおかた……両手でも余ってしまいますわねえ。
ま、底辺ながらもガンバリます☆
心より御礼申し上げます♬