はぁっ……
わたくしはPCの前でカールした長いまつ毛をふせて、いつになくため息をつきました。
わたくしったら、猟奇ストを名乗りながらも、いったい何を描いているのかしら。
身の毛もよだつ、オドロオドロしい、一行目をご覧になったおかたが間髪いれずブラバするような物語を描きたいのに……
「本心なのかしら、その気持ちは。つばきちゃん」
え?
わたくしはあわてて振り返ります。
あ、あなたはわたくしの創造したキャラ、ナーティ白雪嬢!
「いやだっ、この子ったら。ワタクシはそんなオカマ巨人じゃなくてよ」
いやいや、その樽のような巨体に髷のように頭に髪を丸め、七色のきらびやかなドレス姿は、どこから見てもナーティ嬢よ!
「ふうっ、これだから若い乙女はイヤなの。ワタクシは、語り部の女神よ」
は? はあ
それでなにゆえ背後霊のように立っていらしゃるの?
「あなた、あなたは本当は恋の物語を描きたいのじゃなくて?」
え、え〜っと……
「ワタクシはね、分泌じゃなかった、文筆なさる乙女の味方よ。つばきちゃん、あなた猟奇ストなどと名乗りながら、本当は燃えるような恋の物語を描きたいのじゃなくて?」
その語り部の女神は華麗に舞いながら言います。
でも、どうみてもシコを踏んでるようにしか見えない。
「ほら、ちょうどいいわ。もうすぐカクヨム界で、恋のお話コンテストが始まるの。
あなた、描きなさいな。恋の物語を」
いや、だって、わたくしが描けば間違いなくおぞましき恋のお話になってしまいます。
人形に恋したり、半魚人に恋したり、あ、ぬらりひょんでもいいかも。
「ワタクシには見えるの。あなたが素敵な恋の物語を紡ぐ姿が。
恋愛経験のとぼしいあなただからこそ、描ける世界があるのよ。
いいこと。必ず描くのよ」
相撲取り、いえ、語り部の女神はうっとりとした瞳でワタクシを見て、ウインクなさいました。
ちょ、ちょっとコワい!
ハッと気づくと、わたくしは高級マホガニーのデスクに頭を乗せて寝ておりました。
あわててヨダレ、いえ、両目をこすり、今の語り部の女神のお話を思い出しておりました。
恋の物語。
描いてみようかな♬
(あくまでも架空のまゆつば物語でございます)