大きな満月をバックに、まるで巨人のように建つ時計塔。
わたくしはタッタッタッと足音を響かせながら、そこを目指して駆けていきます。
時計塔が目前に立ちはだかっております。
上ばかり気にして走っておりましたわたしくしは、道路にあったそれに危うく足を引っ掛けて転がりそうになりました。
日ごろから鍛えた身体能力。
サッと宙で一回転して、片膝をついてその異物を確認しました。
梯子……えっ?
なにゆえこんなところに梯子が?
しかもあのB・Dバッジが大量に撒き散らかされているではありませぬか。そのそばには古いリュックサックがございます。
鋭い視線を感じ、素早く切れ長二重の目を時計塔に向けました。
はっ!
なんと、時計塔のテッペンに取り付けられた巨大な時計盤に、ボウッと燐光が。
しかもその青白い光は、人の形なのです。
「ふっふっふ、さすがは明智くん。よくぞこの “ 夜光人間 ” の元までたどりついたな」
「や、“ 夜光人間 ”?」
「よもや忘れたとは言わせんぞ。以前はきみに苦渋を飲まされたが、今回はこの “ 夜光人間 ” さまが祝杯を上げさせていただく番だ」
「ちょっと待って。はあぁっ……
少々お尋ねいたします。“ 夜光人間 ” の前は、よもや “ 妖人ゴング ” 。その前は “ 魔法博士 ” とか “ 青銅の魔人 ” などとふざけたキャラを演じていなさった?」
「おふざけキャラなどとは、不届き千万じゃな! わしはいつだって大真面目に変装しておるんじゃ」
わたくしは、どっと疲れました。
「えーっと、ぶっちゃけ、怪人二十面相さまですわね」
「ふっふっふっ、さすがは明智くん。このわしの真の正体を見破るとは。あっぱれ! わが生涯の好敵手よ」
「あのう、わたくし、多忙な身ゆえ、これで失礼いたします」
「あっ、ちょ、ちょっと待つのじゃ、明智くん」
わたくしはこれみよがしに、再度大きくため息をついてやりました。
「B・Dバッジなんて、よくもまあ大量に持ち歩けたものですわね。この背負ってらっしゃったリュックもさぞかし重かったのでしょう。よく考えれば、小林団長も隠居されて、少年探偵団はとうの昔に解散しておりますもの。
あなたのお遊びに付き合う義理もございませぬゆえ、マジに帰りますわね」
「いや、帰る前に頼みがあるんじゃ」
はは~ん、わたくしはピンときました。
「梯子ですわね。そこへ登ったとたんリュックが引っかかって、梯子が倒れたのでございましょう。
自業自得ですわね。そこで朝日を拝んだらいかがですか、怪人二十面相さま」
「いや、梯子もそうなんじゃが。この夜光塗料を塗った上着が、ほれ、この長針に引っかかってしもうてな。
はずそうにもはずせんのじゃ。すまんがここまで登ってきて、はずすのを手伝おうてはくれんかの」
憐れ、怪人二十面相さまは、時計盤の長針が時を刻むごとに身体がカックン、カックンと持っていかれていおります。現在は宙ぶらりんで、青白く発光している脚がブ~ラブラ揺れております。
なにゆえわたくしがお手伝いせねばならぬのか、そうは申しましても相手はご高齢の身。
わたくしは重い梯子を立てかけて、怪人二十面相さまを救出に向かいました。
やはりあの時、確認などせずに、さっさと放り投げれば良かったのですわ、B・Dバッジを。
疲れて帰宅したわたくしは、唯一の楽しみであるカクヨムさまをチェックいたします。腕が筋肉痛だわ。
あ、「明日へ奏でる草笛の音」にレビューをいただいております!
黄間友香 さま、
どうも初めまして! この度はご多忙の中にも関わらずお目通しくださり、またレビューまで頂戴いたしまして誠にありがとうございます!
SFの定義ってなかなか難しゅうございます。それゆえ初心者のおかたにも楽しんでいただいたなどとおっしゃってくだすって、嬉しい♡
わたくしも現在はハードSFは、ちと遠ざかっておりますの。あくまでもライトで♪
心より御礼申し上げます♬
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!