本日は町内にございます、プロレス団体『カピバラの穴』の公開スパーリングを見学に来ております。
この団体は商店街が後援しておりまして、我が町内会も協賛いたしておりますの。
公園横の倉庫を改築し、四角いリングを中央に設置。あとは興業される際には折りたたみ式のパイプ椅子をその周囲に並べます。
普段は若手のレスラーさまたちがトレーニングするために、マットやスパーリング用のサンドバッグなどが出されております。
町内会の役員面々がリング脇に並べられたパイプ椅子に腰を下ろしまして、練習するレスラーの皆さまに声援を送っております。
リング内にはお二人の若手が、ロープサイドには中堅のレスラーさまが数名お立ちになり、竹刀などを持たれて激を飛ばしておいでです。
そして、この団体の社長兼看板レスラー、“ THE・ZOO ” さまが太い腕を組んで我々の横に立ち、鋭い視線をリングに向けておられます。
ご存じでしょうかしら、正義の覆面レスラー “ THE・ZOO ” を。
象の耳、馬のタテガミ、サイの鼻、虎の口、パンダの目をかたどったマスク。
さらに、ゴリラの胸、カンガルーの育児のう、脚には豹柄、ダチョウの足ブーツ、背中にはラクダのコブ、お尻にはきらめくクジャクの尾、と全身タイツに模造してあります。
両腕をバッと広げますと、なんとモモンガの飛膜まであしらっております。
ええ、リングネームのようにあらゆる動物の特徴を兼ね備えられた、最強のレスラーさまです。
パッと見は得体のしれない化け物のようですけど、慣れればこれがまたカッコよいのです。
リング上では派手な音を立てながら、ドロップキックやウエスタンラリアットの応酬、バックドロップにコブラツイストなどの大技まで炸裂しております。
やはり生で観ますと、迫力が違います。
「オラァッ、もっと素早く動かんかい!」
「遅い遅い! チンタラするな!」
ロープサイドでTシャツにショートパンツ姿の先輩たちが、口々の怒声を上げられ、気の弱いわたくしなどその度にビクッと身体を硬直させてしまいます。
ジッと見つめる “ THE・ ZOO ” さま。そこへ、ジャージ姿の練習生らしき若者が小走りで近づいて参りました。
「社長っ」
「うむ」
「すんません、入口にちょっとわけのわからない人が」
「なに、道場破りか。それとも素人さんがプロレスなんて所詮はシナリオのあるショーじゃないか、などと挑戦にでもきたのか。
もしそうなら、誓約書をいただけ。リング上で怪我を負わされても、一切責任を求めないってな」
「いやあ、それが。入門希望らしいんです」
まあ! 自らの肉体を鍛え上げてプロの格闘家を目指されるのね。
「うちは、来るものは拒まずだ。ただし練習では地獄を見るけどな。そのあたりは大丈夫そうか」
「あのう、入門はお断りしたほうが」
「なんだ、まさかおまえが、新参者に追い抜かれるのが嫌だとでも言うんじゃないだろうな」
「いえいえ、そうじゃあないんです」
「ならば遠慮はいらん。ちょうど今ここで公開スパーリングをやっているんだから、どれだけキツイか、まずは観てもらおうじゃないか」
「はあ、本人もかなりやる気で、なんでもバアさんに作ってもらったっていう、白い覆面までしてきてるんですよ」
若手が入門者を呼びに行こうと振り返った時、“ THE・ZOO ” さまはそのジャージを引っ張ったのです。
「ちょっと待て」
「はい?」
「今、バアさんに覆面を作ってもらった、と言ったか?」
「ええ。額に “ です ” って平仮名で刺繍してあるんですよ。“ です ”って死を英語で言うんですよね。なんか、カッコいいっす」
「いや、“ です ” はどうでもいい。念のため確認するが、その人はお幾つくらいだ。身体つきはどうなんだ」
「はい。覆面で顔を隠されてますけど、杖をつかれていて、身長は多分百五十センチくらいっすか。
なんでも昔からプロレスのファンで、お子さんも独立していて、たまに中学生のお孫さんが遊びにくるらしいんですって。
そのお孫さんに、ぜひとも自分の晴れ姿を見せてやりたいとか」
“ THE・ZOO ” さまは若手を真っ直ぐ見たまま、「お帰りいただけ」と一言おっしゃいました。
やはり来る者でも拒まれることがございますのねえ。
いつの間にやらリング上では、先輩の皆さまも参戦されバトルロイヤル状態です。
いっけ~! やっちまえ~! フ~ッ!
と、わたくしもコブシを振り上げながら、素早くスマホでカクヨムさまをチェックです。
あ、「魔陣幻戯~アイドル志望は時給戦士」にレビューをいただいております!
オリオン さま、
平素は大変お世話になっております。年末のご多忙な時にご覧くださり、また血沸き肉躍るレビューを頂戴いたしまして、誠にありがとうございます!
遥か宇宙の彼方で漂っておりました今作、お★さまをいただけて嬉しい♡ 珠三郎をカッコよくする予定ではありませんでしたのに、いつの間にやらシャシャリ出てきてしまいましたの。主人公は誰?
心より御礼申し上げます♬
ま、「夜空いっぱいのシューティング・スター」にレビューを頂戴しております!
aoiaoi さま、
アオイちゃ~ん、師走の真っ只中ですのにお目通しくださり、素敵なレビューまでいただきまして、誠にありがとうございます!
読んでよかった、などとおっしゃってくだすって嬉しい♡
猟奇が持ち味のわたくしが、なぜハートフルな物語を……年に一度のクリスマスゆえ、でございますわね。
少しでも寒さがしのげるお話に、なっておりましたでしょうかしら。
心より御礼申し上げます♬