商店街で開催されました町内会を終え、わたくしはその通り沿いにございますちょっぴりお洒落なカフェにてティ・タイムでございます。
ランチタイムの時間も終わっており、店内にはちらほらとご常連のかたがたがおみえでした。
わたくしは壁際の高級なソファに身を委ねまして、ウエイトレスさまにホットレモンティをオーダーいたします。
ふとお隣のテーブルに視線を向けますと、ビシッとスーツをお召しになった若いイケメンの殿方がコーヒーをすすっておられます。
イケメンだからと申しましても、すぐに飛びつくわたくしではございませぬ。
そのあたりは、ちゃあんと節操をわきまえておりますのよ。
とは申しましても、わたくしの切れ長二重の目は、チラリチラリとその殿方を盗み見ております。
しばらくいたしますと、入口から急ぎ足で女性のおかたが入って参りました。
化粧映えのする、美しく若い女性で、身体のラインを活かした鮮やかなブルーのパンツスーツです。
ま、美しいと申しましたのは、あくまでもエールを送る意味合いです。もちろん、真から涌き出る美貌で、このわたくしと競り合える水準ではございませぬ。おほほっ。
女性は息を切らすようにしながら、わたくしの目の前を通り過ぎ、横のテーブルに座る殿方の前に座りました。
「ごめんなさい、お待ちになったでしょ」
「いえ、僕もきたばかりです。そんなに急いで来られなくても、僕はいくらでも待ちますよ」
「ありがとうございます。嬉しい」
ウエイトレスさまが来られ、女性はホットレモンティをオーダーされます。
あら、このわたくしの真似をされるなんて。
お二人はお互いに見やり、ニコヤカな微笑みを浮かべられております。
雰囲気からいたしますと、カップルかしら。それも、お付き合いなさってまだ日が浅いわね。
わたくしは冴えわたる観察眼で、お隣をチラ見いたします。
「「あのぅ」」
お二人は同時に口を開きます。
「「あ、どうぞ、お先に」」
同じように手のひらを上向けまして、これまた同じセリフ。
すると女性のほうがコホンと咳払いをして、一度下を向いて顔を上げられました。
「すみません。では私から……あっ、普段は自らしゃしゃり出るタイプではないのですよ」
「無論、承知しております。僕は女性を見る目には自信があります」
「まあ、お上手。あの、私は今まで男性と二人っきりで、そのう、お付き合いなんてしたことがなくって。奥手なタイプなんです。
だから、デートしてくださる日は、もう前日からワクワクして眠れなくって。
ですから、こんなお願いをするなんて、いったいどういう女なんだって嫌われたらどうしようって」
「僕だって好意を寄せる女性と、こうして、いわゆるデートできるなんて夢のようです。
どうぞおっしゃって。嫌いになる理由など、考えられませんから」
「嬉しいわ。じゃあ思い切ってお話します。これは二人の将来のために、あっ、ごめんなさい、また勝手に夢想しちゃって」
「いや、僕は今とても感動しています。実は僕も多分あなたと同じ考えだから」
「実は私の知り合いが、とある海外の投資家から誘いを受けているんです。太陽光を利用した画期的な技術がまもなく発表されるんですけど、その企業に資金を預けてみないかって。
技術が公になれば、間違いなくその企業に莫大なお金が入るのは間違いないらしいんです。先行投資をしておけば、少なく見積もっても十倍から三十倍になるって言われてるんです。
でも最低投資金額は二千万円で、私にはとてもそんな余裕はないし。
大手商社にお勤めのあなたであれば、些細な金額でしょうけど。
その締切が三日後なんです。
ですから二人の将来を安泰なものにするために、私はやってもみてもいいんじゃないかなって。
ああ、ごめんなさい。
こんなお話、藪から棒でしたわね」
あら、なんだかお話の雲行きが怪しくなってきたわね。
「ありがとう。それは素敵なお誘いだ。二千万円か……都合がつかない金額じゃあないなあ」
「あっ、それならすぐに契約を!」
「うん、いいね。ところで僕の話なんだが」
「ああ、そうだったわ。どうぞお話になって」
「その資金に関わる話なんです。今言いましたように、預金には二千万円程度は置いてあります。
仕事一本やりでこれといった趣味のない僕ですから。すぐにでも手配しましょう。
ただその前に、僕が現在取り組んでいるプロジェクトで、会社を通さずに個人資金を融通してくれないかと上司から誘われていましてね。チーム全体で三億円ほど都合しようとしているんです。
これが上手くいけば、僕は係長から一気に次長まで昇進できるんです。
ただ銀行から借り受けるのに、連帯保証人の印鑑が必要なんです。
もちろん誰にでも頼める話じゃない。
僕は将来は役員になるつもりなんです。その未来の役員夫人に、ぜひあなたになって欲しい。
だからその保証人になってくれないかな」
え、ちょっと待って。連帯保証人って、一番ヤバいパターンよ。
カップルは互いにジッと相手を見つめております。
「なあんだ、あなたも私と同業なの?」
「どうやらそうみたいだね。まさかあなたから架空の投資話が出るなんて、思ってもみなかったな」
「それは私もよ。連帯保証人になってトンズラこかれちゃったら、私は一生利息だけを支払っていく生活よ」
アツアツのカップルは、火花を散らすように互いを鋭い視線で見ております。
ま、世の中っていいお話には必ず裏があるってことですわね。
お茶が冷めてしまいましたため、ウエイトレスさまにお代わりをオーダーし、その間にカクヨムさまをチェックです。
あ、「夜空いっぱいのシューティング・スター」レビューとお★さまをいただいております!
ボンゴレ☆ビガンゴ さま、
この度はご多忙の中ご覧くださり、誠にありがとうございます!
素敵な話というお言葉、感激しております。
心より御礼申し上げます♬
悠月沙霧 さま、
沙霧ちゃん、師走でご執筆も大変な時期にご覧くださり、またレビューまでいただきまして誠にありがとうございます!
とても素敵なレビューです。心のままに書いてくだすったのがよく伝わります。美辞麗句じゃない、素直なお言葉に、つばきは大感激でございます。嬉しい♡
描いて良かった、わたくしも素直にそう思います。
心より御礼申し上げます♬
くさなぎ そうし さま、
どうも初めまして! 年末ご多忙の中にも関わらずお目通しくださり、またレビューまで頂戴し誠にありがとうございます!
こんな親っさん、昔の下町にはおられたんでしょうねえ。気風が良い、表裏の無い職人です。次回に期待だなんて、ハードルが高うございますけど、嬉しい♡
やはりソリも飲酒運転になるのかしら?
心より御礼申し上げます♬
水谷 悠歩 さま、
平素は大変お世話になっております。師走まっただ中、その合間にわざわざご覧くださり、レビューまで、誠にありがとうございます!
ロック魂をお褒めくださり、嬉しい♡
クリスマスには世界中に笑顔があふれることを、お祈りいたしております。え? あの珠をご所望でございますのかしら。いったい何をお望みに……聴かぬが華、でございますわね。
心より御礼申し上げます♬
鷹山雲路さま、
どうも初めまして! ご多忙な十二月にわざわざご覧くださり、きらめくお★さまを頂戴いたしまして、誠にありがとうございます!
わたくしにとって、一足早いクリスマス・プレゼントになりました。
心より御礼申し上げます♬
また拙作をご覧くだすって皆さま、つばきは心より感謝申し上げます。ありがとうございます♡